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巨乳ファンタジー巨乳ファンタジー
(2009/10/23)
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巨乳ファンタジー外伝
巨乳魔女
↓管理人が書いたレビュー記事です。
文籍空閑地ブログ : [ゲーム]巨乳ファンタジー(+外伝、魔女)[レビュー]

 第1話 「ゴーレム侵乳編」


 18禁ゲーム、「巨乳ファンタジー」「巨乳ファンタジー外伝」「巨乳魔女」の設定を元にした二次創作小説です。
 原作を知らなくても読めるように半ばオリジナルで書きました。原作キャラなどは登場しません。
 原作設定などは物語中で説明しています。
 SFとかいてありますが、未来の話、というだけで、厳密なSF的考証は残念な出来だと思います、多分。
 SF(すこしふしぎ)というよりSM(すこしみらい)ということでひとつ。
 遠未来世界、神聖魔手という特別な手の持ち主が2人、世に登場した。1人は男、1人は女。
 世界を荒らしてまわるサキュバスを相手に、2人は――


 注・18禁です




 ドオォオン、ドォオオン!!
 轟音と共に震動する大地。
「まいったなぁ……」
 俺は地面に片膝をたててしゃがみ、地響きの元凶、そそりたつ塔のような巨人を見つめた。
 それは人の形をした機械兵で、先輩の兵士達はそれをゴーレムと呼んでいた。
「まだ巨乳も爆乳も美巨乳も満足に揉んでないってのに」
 周りには俺一人しかいなくて、あるのはゴーレムと、ゴーレムが破壊した味方の機械兵、アンロイド達だけ。味方機械兵は全壊、よくて半壊の状態で転がっているだけだった。
 命令でこの戦地まで来て、最初に出くわしたのがこんな巨大機械兵なんて……。
 俺はこの戦場にまで行くことになった経緯を、走馬灯のように思い浮かべた。


 未来世界。
 俺たちが生きてるのは、多分そんな世界だと思う。
 見上げれば車は空を飛び、地上を見下ろせば行き交う人の多くはアンドロイドだったり。
 人は建康や娯楽目的以外ではほとんど動く必要が無くなり、その活動の多くをメイドロボや執事ロボにお任せしている。
 ま、俺みたいな貧乏人は、自力でやってるけどね。
 俺も胸の大っきいメイドロボ欲しいなぁ。いや、やっぱり生身のメイドの方が良いかな。
 ともかく、俺たちは機械とほぼ一体化して暮らしている。機械のない日常なんて考えられないし、何より、俺たちのトップ、現大統領がアンドロイドだったりするから、最早、人間と機械の境界はほとんど無い。アンドロイドと結婚する奴もいるし。
 そういうのが嫌だっていうやつは、俺たちの国、エイラント共和国から離脱して、北にあるカレンシア女王国に移住している。
 カレンシアの人たちは、機械を、工業、輸送、軍事目的としてしか使っていない。日々の暮らしにおいては、人の手だけで全てをまかなっているらしい。
 そんなカレンシアとエイラントは、相容れない国として昔から戦争をしてきたが、今は互いに互いを無視する関係になっている。儀礼的な外交以外は交流もないし、互いの国に旅行する人もほとんどない。
「でも一度くらいは見てみたいなぁ~」
 北の宝石、カレンシア。そこから産まれる女性はことごとく美しく、なにより胸が大きいとか。
「ま、今はまだ夢のまた夢だけどな」
 職なし金なし身寄りなしな今の自分に、国外旅行券が発行されるわけがないからな。
「ひとまず、今日の野宿場所探さないとなー」
 と、独り言を呟きながら、ふらふらと歩く。
 大きなお屋敷が視界の隅に見えてきた。
「あれは……なんだっけ? デッカート本家の別宅だったかな?」
 エイラント共和国の中でも「貴族的」と言われる、デッカート家。その本家はエイラント内に20の邸宅を持っている。小さい別荘(といっても庶民の感覚すればでかい)は除いてだ。
「庭先か馬小屋でも貸してくれないかな?」
 訊いてみよう。
「えーっと……そもそも入口がわかんないや」
 屋敷をぐるりと取り囲む長大な白壁。切れ目が無くて、どこから入ればいいかさっぱりわからない。
「……あ、もしかして上からしか入れないのか?」
 ありうる。
「ちぇ、仕方ないか…………お、公園がある」
 お屋敷の隣にある公園。デッカート家が国に寄贈した、と看板に書いてある。
「じゃあ、こっちを借りようかな。無断だけど」
 みたところ、雨露をしのげそうな透明半球天井つきの休憩室がある。あそこで寝袋を広げさせてもらおう。
「ん?」
休憩室の中に入ると、パチパチ、ガタガタと何かが弾け、揺れるような音がしていた。
きょろきょろあたりを見回すと、休憩室の隅に、自走販売ロボが倒れているのを見つけた。飲物や食べ物、燃料、情報を売る、自走式のロボットだ。ロボは円筒形のボディを横たわらせて、多目的腕をじたばたさせていた。
「故障か?」
 傍らに膝をつき、左手でボディをさぐり、様子を見る。
「んー、誰かに壊されたのかもしれないな、通信系と自己修復系がピンポイントで壊されてら」
 ロボは自己修復系が壊されても、通信系さえ無事なら、他のロボを呼べる。しかし、通信系と自己修復系を同時に破壊されると、どうにもならない。
 バタバタともがくロボの姿を見て、俺は気の毒になった。
「仕方ないな……」
 機械にそれほど詳しいわけじゃないが、エイラントに暮らしていれば、機械応急処置は必須科目だ。
「部品がないと直らないかもしれないけど……」
 俺はロボに触らないようにしていた右腕をだし、拳を握ったり開いたりした後、壊れている箇処にかざし、ゆっくりと触れた。
 本来、学院で習う応急処置にそんな対処法はない。というか、無闇に素手で触れると危険だといわれている。
これは、俺だけの治し方だ。
――みだりに右手を使ってはいけませんよ――
 養母だった、アンドロイドが言っていた言葉を思い出す。
――機械にはもちろん、人には絶対に――
 言われた当時はわからなかったけど、今ならわかる。
「……よし」
 右手を離すと、有機部品が再活性化して、破壊され内部が露出していた部分が塞がっていた。
 ロボは立ち上がり、軽快な駆動音を鳴らしながら、こちらを振り向き、開口部を開けた。
「おお?」
 その口から、俺の方へと缶コーヒーが差し出された。
「……なるほど、多分、金を入れたのにこれが出なかったからやられたんだな?」
 たまにあることだ。
「ありがたくもらうとするか」
 缶を受け取り、蓋を外す。ちゃんとしたコーヒーの香りがする。
ぐっ、と一口飲む。ちょっと甘いが、空きっ腹にはちょうど良い感じだった。
一口啜っている間に、ロボは「ありがとうございました」と礼を言いつつ、どこかへと去っていった。
「ふぅ……」
 俺は一息ついて、ロボが消えていった方をぼうっと見つめ、またコーヒーを飲んだ。
「おい、貴様」
 そこに、誰かが声をかけてきた。声の質は男で、どこか威厳のある響きを伴っていた。
俺は声の方向に顔を向けた。
「今、どうやってあれを直した?」
 男は、白髪交りの初老、上等な古式スーツを身に纏っていて、いかにもアッパークラス出身です、といった雰囲気だった。
「え? あはは、なんかゴミが入り込んでたんですよ。だからそれを取っただけで」
 いつから見られてたんだろう。
「嘘をつけ」
 ぴしゃり、と男は断じた。
「手を見せてみろ!」
「ええー……」
 困ったな。
「どっちの手ですか?」
「どっちでも同じだ」
 と、男は自分の右手を差し出す。
どっちでもいいなら……左で良いよね。
 俺は左手を、男の手にゆだねる。
男は俺の左手を両手で確かめ、指で押したり、握ったり、手の平を重ねたりした。
うーん、男相手じゃ嬉しくないなー。
「勘違いか……」
 むむむ、と唸り、じっ、と俺の目を見る。
「一応、貴様の名前を聞こう。なんという?」
「えっと、リュカ。リュカ・テンマです」
「テンマ……? ふん、身なりはともかく、名前は上等だな」
「良く言われます」
 テンマは、200年以上前、カレンシアの名家だったという。今はカレンシア女王家に吸収されていて、テンマ家は公式には存在しない。
 俺とそのテンマ家になにかつながりがあるのかといえば、実を言うと、俺もよく分からない。
「で、そのテンマがこんなところでなにをしている。家出か? 亡命か?」
 おじさんはどうやら俺がカレンシアから来たと思っているらしい。まちがってもいないが正解でもない。この国に来たのは何年も前の話だから。
「え? いえ、ただの浮浪で」
「……」
 おじさんは明らかに嫌な顔をした。
「で、この公園で一夜過ごさせてもらおうかと」
「なんだと? ……よりにもよって俺の家の前で……」
「?」
「仕方ない。ついてこい。こんな人の目につくところでうろつかせるわけにはいかん」
「はぁ」
 俺は従順に、おじさんについていくことにした。缶コーヒーを一気に飲み干し、ゴミ処理機に投入して、おじさんを追い掛ける。
「あのー、おじさんの名前はー?」
 おじさんは早足でどんどん前へ進んでいく。公園の隅にある、管理棟を目指しているようだ。
「フェリドス・デッカートだ」
「……ええっと、デッカートって、あそこにみえる……」
 確認するまもなく、フェリドスは管理棟に入り、入ってすぐの階段を下り、地下の壁に設置された認証システムをよく分からない手順でクリアした。
 壁が動き、通路が開く。
 無機質な管理棟の床に比べて、上質なカーペットを敷いた暖かみのある通路は、方角からして、公園の隣のデッカート家別宅に続いていた。なるほど、上からじゃなくて下から入れるわけか。
「おー」
 通路には、正確な価値はわからないが高そうな壺や絵や誰かの像が飾られていて、いかにもお金持ち、という感じだった。
 やがて通路が終わり、屋敷の内部らしきところに到着すると、俺は長身美麗なメイドと出会った。アンドロイドか人間かはわからないが、眼鏡をかけたその姿は、美しく……なにより、胸がいままで出会った誰よりもでかかった。F……いや、Gはあるだろうか。たわわに実って、揺れている。
「フェリド様、こちらは?」
「拾い物だ。客じゃない。適当に調整して、やる気があるなら使え」
 とおじさんはメイドさんに何かを渡した。
「かしこまりました」
 メイドは深々とお辞儀をし、それに見送られておじさんは屋敷の奥へと消えた。
「あの」
「名前は?」
「リュカ・テンマです」
「……ではリュカ。とりあえず、お風呂に入りなさい。そのままだと調度が汚れます」
「あ、はい」
 俺はメイドさんに案内されて、風呂へと入れられた。
「ふぅー」
 使用人用なんだろうけど、結構広々とした湯船で、思い切り足を伸ばしてつかる。
「湯加減はどうですか?」
「へ?」
 湯の熱さと心地よさ呆けていたところに、いるはずのないひとの声が――
「時間もありませんし、ここで色々説明します」
 さっきのメイドさんが、バスタオル一枚を豊満な体に巻き付けて、立っていた。長身なせいで、バスタオルの端がぎりぎり股間のあたりを隠していて、斜め下から見ればあれな部分がコンニチワしそうで――
「……」
 じぃっ、とメイドさんがこっちを見ている。
 視線の先には、メイドさんの思わぬ登場に驚いて中腰になっていたせいで、俺の屹立した息子がコンニチワ――
「おっと」
 慌てて座り、股間を隠す。
「ふっ、隠さなくてもいいんじゃない?」
 メイドさんは妖艶な微笑を浮かべた。
「いや、刀はいざって時以外はさらさないものだから」
 誘ってるのかな、と思ったが、まだ状況がよく分からないので、おさえることにした。
「ふふっ、確かにそうね」
 メイドさんは俺と対面する位置に立ち、
「でも、手入れする時は抜き身でするものよ。見えないところだけど、ちゃんとしておかないとね」
 と、指をクイクイと曲げて招く仕草をした。
 あがれってことかな……。
 俺はタオルを腰に巻き、メイドさんの目の前にたった。
「じゃあ、洗うから座って」
「え、自分で洗うんじゃ」
「あなたの基準の清潔と、当家基準の清潔は多分違うわ。ともかく、任せなさい」
 強引に座らされる。
 後ろでメイドさんが動く気配がする。いかん、さっきので刺激されて、いかがわしい展開への期待で股間が……。
「洗うわよ」
 期待に反して、まずは髪から。しなやかなてつきで、手早く、しっかりと洗っていく。そのあと一度お湯で流され、タオルで水気が切られる。
 そして、体へと手がうつる。どく、と心臓がはねる。
 泡立てられたボディソープ付きのタオルが、背中にくっつき、擦り付けられた。
 タオルの質が良いのか力加減が絶妙なのか、痛くない程度に、しかししっかり汚れが落ちる勢いで、背中が洗われる。シュッ、シュッ、という柔らかなリズムで、体が清められていく。肩、腕、背中、腰。後ろの大体の部分が終わると次は前――
「えっと、前もですか?」
「任せろと言ったでしょう。でも、やり方は覚えておいて」
 前に回り背中と同じく丁寧な手つきで、胸、脇、おなか……足。
 そこまで洗ったところで、またメイドさんは後ろに回る。
 ちょっと期待したけど、やっぱり股間はなしか……。
 さわ。
「!?」
 油断していたところ、何かがアソコにからみついた。
 メイドさんの細長く綺麗な指が泡をまとって、男根をからめ取る。
「タオルじゃ痛いでしょ」
「……そうですね」
 事も無げに愛撫をはじめた彼女に、何を言えばいいかわからず、ただ頷いた。
 シュッ、シュッ……
 竿を何度も何度も指が往復し、俺のものは完全に勃起した。
「ふふっ」
 それを見て、メイドさんが耳元で艶冶な声を漏らす。
 そのうえ、バスタオルが外れたのか、背中に、明らかに乳房とわかる二つの柔らかな丸みがのっかった。
「っ!」
 メイドさんの手がペニスをしごくたび、おっぱいが揺れ、かすかに、乳首と思しき突起が背中に引っ掛かる。
「ん……あ」
 小さく、メイドさんがみだらな声を上げる。首元に熱い吐息がかかって、アソコだけじゃなく、体全体がゾクゾクっと震えた。
「……気持ちいい?」
「はいっ……」
 手コキのスピードがだんだん速くなっていく。竿だけじゃなくて、片手で亀頭を撫でたり、カリのあたりを指で作ったわっかで刺激したりして、変化を付けていく。
 石鹸の泡だけでなく、先走りの汁も混じり、ますます敏感になったアソコを、容赦なくせめ立てられる。
「くっ、は」
 息が止まる。このまま刺激が続けば、確実に射精する。
 その様子を見て取ったのか、あるいは指で感じ取ったのか、
「出しちゃ駄目」
「へ?」
 いきなり指を止めた。そして、メイドさんはまた俺の目の前に立ち、バスタオルを纏わぬ裸身をさらして――
「どこで、出したい?」
 そんな質問をした。
「どこで、って」
「あなたの望み通りにしてあげる」
 俺は、生唾をごくりとのんだ。
 彼女の、少し熱っぽく赤みがかった白い裸身を上から下までなめ回すように見る。
 バスタオルに隠れていた、巨乳。いや、もう爆乳とかそういうレベルなのかもしれない。柔らかな曲線を描く、宝玉。呼吸をするたびにプリンのように揺れる。重力に逆らってピンと上を向く薄紅の乳首。それをみると、しゃぶりつきたくなる衝動に駆られる。
 視線を下に向ければ、想像以上にくびれた細い腰。小さく、可愛らしいおへそ。そして、恥丘を経て、女陰……。
「?」
 彼女の股間はなぜか石鹸の泡がくっついて、つぅっと、内股に垂れていた。
 ……もしかして、さっき、自分でしてた?
 俺のをしごいている最中、たまに片手を離して自分を慰めていた? 気づかなかった。そんな余裕があるわけ無かった。
 でも、明らかに、石鹸とかお湯とかと違う液体が、彼女の股を伝っているような気がする。
 俺はまた、生唾を飲んだ。
 視線がメイドの陰部に張り付く。
 しかし。
「こっちでお願いします」
 と、俺はおもむろに彼女のおっぱいを揉んだ。
 張りがあるのに、指がどこまでも沈みそうで、しかし力を抜けばすぐに押し返してきて。柔らかいの一言では言い表せない弾力と感触があった。
「っ、ひゃああああっ!!?」
 メイドさんが急に体をぷるっと震わせ、後ずさった。自分の手で胸を抑え、何かを恐れるような目でこちらを見ている。
「な、何を、したの。今?」
「え? 触っただけですけど」
「そんな、それだけで、こんな、こんなに――」
 気持ちよくなるわけが、と彼女は消え入りそうな声で呟いた。
 あ、しまった。右手思いっきり使っちゃった。
「ええっと、あの、胸に出させて欲しいなー、なんて」
「…………わかったわ」
 メイドさんはまだ不思議そうな顔をしていたが、ひざまずき、胸をつきだし、両手で乳房を支えた。
「じゃ、挟むわね」
 浴槽のへりに座った俺の男根を、乳の谷間に挟む。泡で滑りの良くなっているペニスが、柔肌に包まれて、ビクンと跳ね上がる。
 ぱく。
 谷間から逃れそうになった男根の先、亀頭をメイドの口が捉えた。ちゅぷ、という吸着音と共に、舌が鈴口をなぞる。
「……っ!」
 そして、口唇で完全に捕らえたアソコを、根元から乳房で優しくしごかれる。手とは違う、どこかもどかしさを覚える愛撫だが、ペニス全体が、包まれ、摩擦されるためか、じわりじわりと快楽の熱がのぼってきていて、腰が砕けそうだった。
「くっううう!」
 がくがく、と崩れそうになる。なんとか射精する前に倒れるのは防ぎたい。
「ふふ、今度は止めないから、出して良いのよ? れろ」
 舌で亀頭をなめ上げる。
 ぞくぞく、っと射精の欲求が陰嚢から先っちょにまでわきあがってくる。
 初対面の美女に、パイズリだけでなくフェラまで……夢じゃないよな。
 俺はぼうっとなった頭で、ただただ、イク寸前の出したいようなもうちょっと楽しんでいたいような感覚を味わい尽くしていた。
「ちゅ、ちゅぷ、くちゅ、じゅぷ……っ」
 慣れてきたのか、パイズリとフェラの速度が上がった。
 おっぱいでしごかれて揺れるペニスの先を舌でなめまわされ、とけそうだ。
「だして、リュカ。精液、ちゅぷ、出して、ちゅ、ぅう」
 舌だけでなく口で吸われて、我慢の限界に達したところで、乳房の柔らかい愛撫が竿を上下になぞり、そこで――
「くっ、ぁああ!」
 射精した。
 驚いて口からペニスを離したメイドさんは、ザーメンを胸で受け止めた。
「す、すご……熱い……」
 メイドは自身の胸に降りかかった迸りを、指で掬う。
「匂いも、色も濃い……味……う、これは……」
 う、美味いぞーーーー!
 なんて、言うわけがなかった。
 彼女は眉を少ししかめ、しかし、はき出さずに飲み込んだ。
「ふぅ……あ」
 飲み込んだ後、目の前にぶらさがっている俺の精液まみれのアソコを見て、
「こっちも処理しないとね」
 吸った。
「うぁ!」
「ちゅうう、うう……!!」
 イッた後で敏感になった陰茎を、残酷なぐらい思い切り啜って、くっついていた精液、中に残っていた精液を口内に収めて、ごくん、と彼女は飲み込んだ。
「ま、不味いんじゃなかったんですか?」
「おいしくはない……かな」
 彼女は、ちょっと苦笑いした。
 そしてもういちど、お湯と泡付きタオルでアソコを綺麗にし、精液と汗を流し、洗い清めて、俺たちは湯船につかった。
「もし、膣でイキたいなんていったら、裸のまま外に放り出してる所だったわ」
 一息ついたところで、メイドは衝撃の発言をした。
「ええええ!? な、なんでですか?」
「このお屋敷で、下男が女に手を出して妊娠させた、なんてことになったら、困るもの。状況に流されても、貞操を奪わない程度なら許容するわ。いまのようにね」
「ええっと、試したんですか?」
「そう。まぁ、時間をかけて監視するのも面倒だから、こうやって一気に調べるの。人間の男で召使いなんて、ほんと色々気をつかうわ」
「……ご面倒をおかけします」
 危ないところだった。紙一重で、俺のおっぱいへの欲望が功を奏した。
「で、あなたはうちで働きたいの?」
「ええっと、できれば。家がないんで、軒先だけでも貸してもらえたらって思ってただけなんですけど」
「……うちの庭は狩猟犬と警備ロボの住処よ」
「あ、俺、犬とかロボとかなら仲良くできるんで」
「ふふっ、なにそれ」
 メイドさんは失笑した。
「働くなら部屋を一つあげられるわ。もっとも、働くといっても、人手は足りているから、雑用ってことになるだろうけど」
「それで十分です」
「ん、それなら、そうね、明日から働いてもらうとして、実際の雑用の内容はやりながら説明しましょう……何か質問は?」
「ええっと、メイドさんは、名前なんて言うんですか?」
 裸を見せ合ったのに、名前すら知らなかった。
「私? 私は、レリィ・デッカート」
「へ? デッカートって……」
「ああ。本家直系じゃなくて傍系、しかもかなり離れているわ。姓も本当は違う。仕えたあと、あらためて養子縁組して姓をもらったの」
「へー……」
「ま、立場はメイド長に過ぎないわ」
 俺は、多分これだけでかい家のメイド長なのだから、かなりの人数の部下を従えるトップなのだろうな、と思った。
「えっと、あの、さっきのフェリドスっておじさんは?」
「おじさん……まぁいいけど、次からフェリド様って呼びなさいね。フェリド様は本家直系。今のデッカート家当主の孫にあたるわ。ここはフェリド様専用の別宅だから、他の親類は一人を除いていないから、そうね、あなたはデッカート家じゃなくてフェリド様に仕えると考えなさい」
「はぁ。その、一人って言うのは?」
「ご令嬢よ。フェリド様の。ミュア・デッカート様」
「ご令嬢……」
「あなたと同じくらいの年だけど、難しい年ごろだから、あなたに世話は頼まないわ。まぁ、なるべく目につかないようにする事ね」
「難しいんですか」
「男嫌いなのよ」
 ざぱぁ、と水音をたてて立ち上がり、レリィは湯船を出る。
 俺も出た方が良いかと迷っていると、メイドはこちらを見て、
「言っておくけど、さっき言ったように、貞操を奪わない程度ならミュア様に手を出しても、まぁ、合意の上ならいいわ。フェリド様に殺されるかもしれないけどね。あ、ミュア様の貞操を奪ったら私が殺すわ」
「……しません、やりません、絶対に」
 まぁ、まだ会ったことのない子の貞操云々なんていわれても、よくわからないとしか言いようがない。
「じゃ、次に顔を洗って。そのあと部屋へ案内するから」
 促されるまま風呂を出て、洗面台で顔を洗う。
「ここよ」
 案内された部屋は、使用人用の部屋らしかった。
 1人用としては広すぎるんじゃないかと思うぐらい広く、ここ一部屋で暮らせるんじゃないかと思うぐらいすべて調っていた。
「自動調理器、洗濯乾燥機、ベッド……シャワーもついてるんですね」
「ええ。最近、使用人の半分は自働機械だから、人間用の部屋が余っていてね。遠慮無く使っていい」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
 荷物……といっても大した物は入っていないバッグを置いて、ベッドにダイブする。
「食事はここで食べても良いし、ここの真下、使用人用の大型自働調理器を使ってもかまいません。それじゃ、今日はこれで。……歯は磨いて寝なさいよ?」
 最後に釘を刺して、レリィは部屋を出て行った。
 俺はベッドの上で転がり、ふわふわの寝心地をしばし楽しんだ。
「こんなに上等な布団で寝るの、久しぶりだな……」
 テンマの家で暮らしていた子供の頃は、こんな感じだっただろうか。昔のことだからあまり覚えていない。
 父も母も小さな頃に事故死、いるのはアンドロイドの養母だけ。それもやがて機能を停止し、とある小国の養護施設に移された。
 その小国がカレンシアによって滅ぼされた後、俺はどこをどうさ迷ったのか、このエイラントに入国してしまっていた。
 一応、難民ということで保護はされたものの、最低限の補助しかなく、ここまでギリギリの生活だった。
「それが、今、こんな贅沢なところにいられるなんて……」
 できすぎてるな。と、俺は思い、うとうととまどろみ、不意にレリィの忠告を思い出して歯を磨きに行き、それを終えると、またベッドに潜り込んだ。
「おじさんも、レリィさんもいい人だし……ここなら、安心できそうだよ……姉さん」
 俺は思い出の彼方に浮かぶ面影に語りかけて、やがて、泥のように眠った。



「で、あの男、どんな様子だ?」
 リュカが眠りについてから少し後、屋敷の一室でフェリドスとレリィが対面していた。
 蝋燭の妖しげな光の下、合成酒ではない高い酒を呷りながら、フェリドスは視線をレリィに向けた。
「……少々、手に違和感が」
「やはりそうか……だが、俺が見たときは何の兆しも見えなかったが」
「神聖魔手……」
 レリィは小さく、独り言のようにつぶやく。
 神聖魔手。それは魔族の王が持つ、特別な手。様々な力を発動させ、人や力に干渉する手。古代から近代まで時折その手の持ち主が現れては、世界や時代、社会、周辺の人々に多大な影響を与えていった。
「まだ、彼が、その、神聖魔手の持ち手かはわかりません。一度しか触れられていませんし」
「……まぁ、どちらでもよい。どうせこの時代では、按摩の役ぐらいにしかたたんだろう」
 どこか苦虫をかみつぶすような表情で、フェリドスは吐き捨てる。
「フェリド様……」
 フェリドスは、かつて神聖魔手を持ったトール・ヘンデという親友がいた。
 トールはカレンシア出身で、エイラント出身のフェリドスとは、戦場で出会い、互いに友情を育む希有な仲だった。
 しかし、10年以上前、トールは、殺されてしまった。神聖魔手をおそれたエイラントの軍によって襲撃を受け、殺されたのだ。その事件には、デッカート本家当主も関わっていたと聞く。フェリドスは、デッカート本家に情報を奪われ、泳がされ、利用されたのだ。
 襲撃を受けたその日、トールの妻とフェリドスの妻も同時に死亡した。トールがいたのは病院で、ちょうどトールの子とフェリドスの子が生まれた数日後だったのだ。
 生まれた子供たち……双方とも娘だったのだが、片方はフェリドスが救出した。トールの子、ミュアだ。フェリドスの生まれたばかりの娘と、その時病院にいたトールの年長の娘、リリアは今も行方不明だ。
 フェリドスはミュアを引き取り、自分の娘同前に愛し、育てた。
 妻こそいなくなったが、ミュアのために、デッカート家の力にすがることなく多くのことをなした。そうして築いたのが、この屋敷であり、今の地位であり、平穏な日常だった。
 フェリドスは、自分が幸福であると、信じている。
 それでも、時折、自分の、顔を見ることも出来なかった娘を想起するのか、眠れぬ一夜を過ごすことがあった。
 そして、親友や、妻の事を思い、涙するのだった。
「悪さをしないようなら、おいておけ。何かには使えるだろう」
「はい。フェリド様」
 そうして、フェリドスはレリィをさがらせた。
 今日も、多分、眠れぬ夜を過ごすのだろう。
 レリィは睡眠薬を処方して、酒瓶の横に置き、退室した。
 我が主が眠れるよう、祈りながら。



「今日から働くことになった、リュカ・テンマです。よろしく」
 次の日、俺は、たくさんの使用人の前で挨拶した。
 使用人はほとんど同じ黒服を着ていて、その半数がアンドロイドらしく、同じような顔をしていた。支給されたコンタクトレンズをつけておくと、誰かに焦点を合わせればその人の名前がわかるので、なんとか識別できる。これがなければ、誰が誰だかわからず。混乱しっぱなしだっただろう。
「おう、よろしく、新入り」
「ふひひ、これで雑用押しつけられるな」
「これで、アンドロイドだからっていろいろやらされる境遇からおさらばだ」
 先輩方は、なにやらこちらをみて半笑いだ。
 服装おかしかったかな? 用意された服を着たんだけど。
「じゃ、とりあえず、フェリド様、ミュア様のお食事からだ」
「手作りなんですか?」
「ああ。まぁ、調理専門アンドロイドがやるからほとんど自働調理器と同じだけどな。人間も簡単なやつはやることにしてるんだ。名家の格ってやつだ」
「そうなんですか」
「お前、料理できるか?」
「一通りは。でも、高級料理はできませんけど」
 なにせいままで自動調理器に頼らないで生きてたからな。自動調理器のスペックでは調理できない、変な形の食材を安値で譲ってもらったりして。
「そうか。じゃあ、調理専門アンドロイドからレシピもらってやってみろ。今日覚えて、明日からだ」
「はい!」
 俺はレシピをもらって、次の仕事へうつる。
「清掃はロボットがやるが、確認は俺たちがやる。チェック項目全部埋めて、次だ」
 何十とあるチェック項目をしらみつぶしにして、次へ。
「ロボットの修理。自働メンテナンスができなくなったやつから、工房へ運べ」
「はい!」
 ちょうど動かなくなってたやつがあったので、運んで次へ。
「警備室。時々入ってくる不届きなやつを撃退する。まぁ、俺たちは警備に以上がないか見てるだけだが、人間が必ず一人はいるように指導されてるから、お前もローテーションに従って交代するように」
「はい!」
「あとは、日々いろいろ変化する、旦那様とご令嬢からの要求を果たすだけだ。命令されたことで、わからない事があったら、メイド長のレリィさんに訊け」
「はい! ……あれ? 執事さんとかは?」
 メイドや召使いを統括する家政の長は、大抵、執事という上位職の人が担当する。
「今はいない。レリィさんが暫定トップってこった。まぁ、大抵のことは彼女に訊けば間違いはない。胸もでかいしな!」
 それは関係あるのか。確かにでかいが。
「わかりました!」
 こうして俺は慌ただしく働き始めた。

 数日後。
「で、どうです、リュカの働きぶりは」
 レリィはリュカの指導係を呼び出した。
「はい。それなりに、よく働いています」
「うんうん、使いっ走りも快く引き受けてくれるし――」
「馬鹿っ!」
 黒服の一人が黒服の一人を肘で小突いた。
「……」
(眼鏡外すと、顔を見ても誰が誰だかわかんないのよね……)
 レリィの眼鏡は、黒服達が使用しているサングラス、リュカが使っているコンタクトレンズと同じものだ。仮想現実を感覚的に捉えることが出来る。人に焦点をあわせれば、その人の公開パーソナルデータを取得できる。その他にも色々機能があって便利なのだが、多数の人を視界に収めるとうざったいため、レリィは眼鏡を付けたり外したりして、対応している。
 しかし、顔がほとんど同じ黒服たちを相手にする時、眼鏡がないと、どうにもこまる。レリィは洗浄していた眼鏡を取り出し、装着した。
「……なんでパーソナルデータの名前まで『黒服』で登録してあるのよ……」
「大体の仕事はこなせてますよ」
 と、黒服A。
「面倒な仕事も嫌な顔せずにやるしな」
 と、黒服B。
「ただ、ミュア様付の赤服とか、フェリドス様付の赤服とかはいい顔してませんけどね」
 と、黒服C。
「というと?」
 赤服というのは、赤い服を着た、優秀な召使いを指す。大抵、フェリドスやミュアの傍で控え、仕事をこなす。
「あいつら特別だからって、下には偉そうな態度とるから」
「旦那様が拾ってきたって事で、あいつ噂になってて」
「それで赤服が、いじめじみたことしてるんすよ」
「ふぅん……」
 レリィの立場は赤服より上だ。というか、この家では、フェリドス、ミュアに次いで3番目に偉い。
 赤服に指導、命令することもできるが……。
「旦那様と御嬢様の迷惑にならない範囲なら見過ごして良い。リュカ本人に対処させなさい」
「はぁ」
「了解です」
 黒服達は報告を終え、退室する。
「やっぱレリィさん超どSだな」
「おっぱいでかいしな」
「新人、いじめられるぞー」

 しかし、当の本人は、全然いじめに気づいていなかったという。

「困ったな……」
 だが、いじめとは別に、問題が生じていた。
 俺の手元には淹れたての紅茶がある。
 御嬢様用に紅茶を、という注文だったのだが、ミュア様付の赤服がつかまらない。なんどか携帯端末でコールしたが、でないし。
「レリィさんもいないし……ええい、紅茶に罪はないんだ」
 このままじゃ冷めてしまう。
 紅茶を渡すぐらい問題なかろう。
 自働運搬車にティーセットを乗せ、ミュア様の部屋への移動命令を出す。このままこいつに任せても良いのだが、それをすれば、赤服が後で怒られるだろう。
 自働運搬車に従って、ミュア様の部屋の前へ。一応、場所は知っていたのだが、実際に来たのは初めてだ。
「御嬢様……お茶の用意ができましたが」
「どうぞ。入って」
「は、失礼致します」
 ドアを開ける。
 はなやかな、いかにも女性の部屋といった風情の部屋が、目に飛び込んでくる。ヌイグルミ、丸みを帯びたテーブル、花、きらびやかな陳列棚。壁はゆっくりと変化する環境映像を映し続け、部屋の中は、まるで森の中の川を遡る豪華な箱船のよう。
「ご苦労様……」
 御嬢様は部屋の奥の椅子に腰掛け、ペットの犬と戯れていた。多分、愛玩用のペットロボだろう。
 彼女は立ち上がり、俺の方を向いた。
 俺と同年代の、女性。いや、まだ少女といったほうがいいだろうか。
 成長の途中、しかし、女としての機能を備え始めた、少女。細い足、柔らかなふくらみとくびれをもった尻から腰、ブロンドの髪を一房のせた曲線を描き弾む胸、色気の香り始めた肌を露出した首もと、そしてその上、美しく整い、薄く笑みを浮かべた顔。顔つきに幼さは残るものの、御嬢様らしい、無邪気な可愛さは、他にない貴重な美だ。
 それに、レリィさんも大きかったけど、御嬢様もまた……でかい。
 俺は思わず、一点、ミュア様の胸を見つめていた。
 レリィさんの、服を破っちゃいそうなぐらいの大きさではないものの、何かあればこぼれてしまうんじゃないか、と思えるぐらい、そのおっぱいはでかかった。
 多分、感触も違うんだろうな……レリィさんの時は、一回しか揉めなかったけど。
 股間が反応しそうになったので慌てて視線を外し、御嬢様の顔を見た。
「……赤服じゃないのね」
「は、はい。御嬢様付の赤服は今手が離せないようで」
「そう……」
 ミュア様は、じっ、と俺を見つめる。
 男嫌いって言ってたが……そうでもない?
「蹴りたくなる顔ね」
 そうでもなくなかった。
「紅茶です……」
 運搬車からティーセットを出し、テーブルに載せる。
「はい、ありがとう……? いつものお菓子は?」
「……申し訳ありません、存在を知りませんでした」
「あらら」
 ミュア様は小さく肩を落とした。
 しかし、紅茶を一口飲むと。
「……ん、いつもより美味しい」
 目を少し見開き、感心したように微笑む。
「葉は同じ?」
「はい。いつもの、えーっと合成ブレンド、だったはずです」
 正確にはもっと色々種類とか等級とかあったが、覚えていない。
「うーん、じゃあ、何が違うのかしら。茶葉の他に何か入れた?」
「いいえ。あの、ただ入れ方を変えただけです」
「へー。私も紅茶の入れ方ぐらい習ったけど、こんな美味しくはならなかったわ。確かに入れ方で差が……でも、こんなに違うなんて」
 入れ方、というか、ただ右手を茶葉にかざしただけだが。
「あなた、新人よね」
「はい。数日前からです」
「名前は?」
「リュカ・テンマと申します」
「そう。リュカ、ちょっとこっちに」
「は、はい」
 手招きされて近寄る。目の前、手を伸ばせば触れられる距離に。
「もうちょっと」
 さらに促されて接近する。今度は、互いの息がかかるぐらいの距離……ふわっとブロンドの髪から芳しい匂い。
「…………」
 そして、ミュア様は目を伏せた。何かを感じ取ろうとしている様子。音とか匂いとか?
「……匂うわね」
「え?」
 臭かった? いや、ちゃんと風呂には入っているし、臭いを抑えるシートも二枚ほど貼り付けてあるのだが。
「レリィお姉様の匂いがする」
「……!?」
 ま、まさか、あのお風呂での情事を知って――?
「あなた、姉様に手を出した?」
「いえ! 滅相も!」
 こっちからは手を出してない。いや、おっぱいは触ったが。
「そう……戯れに、姉様が触れただけか」
 俺は、ほっと息をつくが、まだミュア様は顔を上げなかった。
「姉様の匂いの奥に、まだ、なにかあるわね」
「へ!?」
 今度こそまったく身に覚えのない事だった。だ、だれの匂いだ。今まで生きるのに精一杯で他に女性との経験なんて――
「なんだか、不思議な……なんだろう、これ……」
 ミュア様にもわからないようで、やがて彼女は顔を上げ、首を傾げた。
「姉様目当てで仕事してるわけじゃないでしょうね」
「は、はい」
「そう……じゃあいいわ。励みなさいな」
「はっ」
「退室してよろしい」
 一礼して、俺はドアへとさがり……
「あ、紅茶はこれからあなたが淹れて」
 そんな言葉を最後にかけられ、俺とミュア様最初の出会いは終わった。
 
 
 
「おら、新入りっ! 使った皿洗浄機に運べ!!」
「はいっ!!」
「清掃チェック甘いぞっ! もっかいやり直せ!!」
「了解です!」
「掃除機壊れたやつ転がってんぞ! 持ってけ!」
「っとと、今行きます!!」
 お嬢様に紅茶を入れた日から、なんだか忙しくなった。
 黒服の同僚たちからだけでなく、赤服からも仕事を指示されるようになったからだ。
「赤服、自分たちの仕事まで押し付けてやがる」
「ミュア様相手の仕事奪われたから、腹が立ったんだろ」
「ったく、リュカは俺たちの部下だってのに」
「これ以上調子にのらせるのも面倒だ。こっちの仕事にまで支障が出るかもだし、介入してもいいだろ」
「おう、じゃあ、ちょっと赤服呼び出すか」
 しばらく忙しかったと思ったら、仕事の量が減った。黒服に尋ねたところ、赤服が仕事を増やしていたから、注意したんだそうだ。
「ありがとうございます、わざわざ」
「気にすんなよ。お前よく働いてっからな。こっちも助かってんだ」
 休憩室で俺と黒服数名で、中休みをとっていた。
 軽食を取るもの、読書するもの、ゲームに興じるもの、めいめいにくつろいでいる。俺は、コーヒーを飲みながら、なんとなくニュース番組を流すチャンネルに合わせて、コンタクトレンズ越しに、仮想空間TVを眺めていた。同じチャンネルに合わせている人がいるのか、チャット空間が視界の端に浮いている。
「――次のニュースです。大陸の中心、セントラルウェブ構造体において、サキュバスが発見されたとの情報が、現地警察によって確認されました」
 サキュバス――ってなんだ?
 俺の疑問は、チャット空間を刺激し、すぐに返事が来た。
(一種の悪魔だろ、なんだっけ、昔はやった)
(淫魔だ。男の精を吸い尽くして殺すらしい)
(こえええ、でも、ちょっと興味が)
(ばーか)
「サキュバスは現在、周辺の集落で人間への吸精をくりかえしており、今日までに十人近くの被害が――」
「休憩終了」
 ニュースの途中でアラームが鳴り、俺は仕事に戻った。
「サキュバス、か」
 なんだか心の端にひっかかるものを感じながら、俺は働くのだった。



「……愚かな人間たち。魔族の王を殺して、タダで済むと思っているなんて」
 指に絞り尽くした精液を纏わせながら、サキュバスはうたう。
「犯し尽くしてやる」
 美しく、夜空に羽ばたき、男を惑わす胸や尻を揺らしながら、うたう。
 カッ。
大陸の中央で、情報と仮想現実を統御、管理するセントラルウェブ構造体。エイラントとカレンシアを分かつ、中立緩衝地帯。その正体は、欲望を生起させ、拡大し、まき散らす、混沌地帯。
その上部構造に立ち、サキュバスはうたう。
「まずは、エイラント……デッカートのゴミクズからイかせてあげる」
 夜の闇にとける長い黒髪をなびかせて、うたう。
 生のうたを。
 悦びのうたを。
 滅びのうたを。



 あのニュースが流れてから、サキュバスのニュースを聞かない日は無くなった。
 サキュバスは下級の魔族から本来上位であるはずのワルキューレまで従えて、周囲の村から町から荒らしてまわり、中立地帯からエイラント近くまでその被害が広がっていた。
 そして、ついに先日、エイラントの北端、ホラン州の村が襲われた。
 しかも、サキュバスやワルキューレだけでなく、死神まで出現したというその村は、ほんの数名を除いて、壊滅した。今まで、被害者の数の方が少なかったのに、今度は完全に滅ぼされたのだ。
 これにより、エイラントは非常事態令を発動させ、軍を召集することにした。
「我らにも召集令状が来た」
 フェリドスは、レリィを呼び、それを見せた。
「数は人間・アンドロイドを10人以上、戦闘用・補助用ロボ二十機以上ですか」
「ああ。一次召集だからこんなものだろう。人間を出す必要はあるまい。アンドロイド中心に組ませろ」
「はい」
 アンドロイドと人間は基本同格同権利とされているが、命の問題がかかってくると、やはり差別がある。
「そういうわけだから、希望する者はこちらに名前を書くように。国からの特別手当と同額倍プッシュでデッカートからも手当を出します」
 それを聞いて、屋敷内はにわかに慌ただしくなった。
「どうするよ」
「どうするもなにもよー、アンドロイドだって、重要部分ぶっ飛ばされたらジャンクだぜ? そこらへんは人間と変わんねーよ。いくら金だされてもよぅ。ま、行かなきゃなんないんだろうけど」
 アンドロイド達は苦い顔をした。アンドロイドは黒服にも赤服にも同じぐらいの割合でいる。
「ならよー、あいつの名前もついでに書いちゃおうぜ! 新人のよ」
 赤服の1人が言った。
「おいおい、本人じゃないやつが書いたらバレるって」
「なあに、あいつをだまして書かせれば良いんだ。問題ない」
「へへ、そうだな……命あっての物種っていうしな、戦場につれてきゃ囮ぐらいに使えそうだ」
 何人かの赤服が同調して、それは行われた。
「旅行?」
「ああ。使用人内で親睦を深めるってことでな。参加するか?」
「俺も良いの?」
「もちろん」
「じゃあ、行くよ」
 差し出された電子紙にサインして、個人認証もした。
「――リュカ、あ、あなた、この紙にサインした!?」
 しばらくして、レリィさんが血相を変えて飛んできた。
「え、ええ。旅行ですよね。レリィさんも行くんですか? どこに行くんですかね?」
「…………ホラン州よ」
「え。あそこ戦闘中じゃ」
「だ・か・ら! 旅行じゃないの! 戦闘なの! サキュバス討伐なの! この紙は召集令状! しかもあなたの名前書いてあって個人認証もしてあって、取り消し期間も過ぎちゃってるの!!」
 レリィさんは、いつものちょっと冷たい感じから想像も付かない熱っぽい口調で、まくしたてた。
「ええー!?」
「まさか、あなたが名前書いてるなんて……」
 はぁ、とレリィは肩を落とした。ぽにょん、とおっぱいが重力に従って垂れ、筋肉によって戻り、蠱惑的に振動した。
「あなたは、これに従って、サキュバス討伐に参加しなきゃならないわ」
「はぁ……」
 なんだか突然すごいことになってしまった……。
「あの、サキュバスを討伐したあとも、軍隊にいなきゃならないんでしょうか?」
「いえ。今回は非常召集だから、令状に書いてある任務を終えたらここに帰ってこれるわ。もし長引くようなら休暇もあるし……こうなったらしかたないわ。絶対に生きて帰ってきなさいね」
「は、はい!」
「お嬢様もあなたのこと気に入ってるのよ……こんな短期間に男を気に入るなんて、驚きだわ」
「そうなんですか?」
「ええ。あなた、ミュア様に美味しい紅茶をいれたり、庭の狩猟犬を飼い馴らして遊ばせたりしたらしいわね」
「はい。退屈そうにしていたので、本物の犬なら遊び相手になるかと思いまして」
「……警備に特化してる狩猟犬を飼い馴らすなんて、どうやったのか……やっぱり、神聖魔手……?」
「え?」
「なんでもないわ。必ず、生きて帰りなさい。言っておくけど、私の時みたいに、サキュ バスに誘われても、やらないのよ? 吸われて死ぬから」
「……はい」
 多分大丈夫……かな? 正直、エロ方面の欲望への耐性は自信がない。
「絶対よ?」
 とレリィは小指を差し出した。
 その小指に、自分の小指をからめる。
 もし生きて帰ってきたらやらせてくれたりするかな。
「声に出てるわよ」
「あわわ」
「くす」
 と、レリィは、とても魅惑的な微笑みで、
「いいよ。ちゃんと帰ってきたらね」
 と約束してくれた。
 ややあって、俺を含む12人は、デッカート家を一時的に辞し、戦場へと向かうことになった。
「ご武運を。あなたがたは、デッカートの使用人ではなく、家族同前。ひとりひとりが全力を持って任務に当たり、無事に帰還することを祈ります」
 ミュア様が俺たち一人一人に声を掛ける。
「あなたがいないと暇だから、とっとと戻ってきなさいね」
 俺にはやたら短い、しかし親しげな挨拶。去り際、きゅっと、一瞬だけ手を握られ、それがどこかお守りのように、熱を手の中に残していった。
「では、いってきます!」
 そして、俺たちは出陣した。
 それを見送って、フェリドスが、ひとり、俺の背中に語りかける。
「リュカ・テンマ。もし、この戦いを、無事に、いや勝利でおさめることができたら――お前は……」
 その言葉は、俺の耳には届かなかった。
 けれど、俺はおじさんに呼ばれている気がして、一度振り返った。
 その時には、フェリドスは邸内に戻っていて、姿は見えなかった。
 ま、今生の別れにはならないさ。きっと。
 数奇な運命を感じながら、俺は歩く。行き先は戦場だ。
「サキュバスか……」
 男の精を枯れるまで絞る悪魔。
「エロいのかな……」
 ちょっと楽しみだったりする。
 なので、足取りはどこか軽く、北へ北へと向かうのだった。



デッカート家の敷地内から伸びる私道をしばらくいくと、軍用輸送機が待っていた。戦車も積めるという、巨人機だ。
 それに乗せられて、ひとっ飛び、数十㎞、多分数百㎞以上北へ。
 しばしの空中散歩を楽しむと、同日には戦場の一歩手前に到着する。ホラン州の州都だ。
 ここから北に2時間ほどいけば、あの被害のあった村に行けるという。
 しかし、滅んだ村にはすでに用は無い。なにせ人もいないし、サキュバス達も移動しているのだ。ともかく、次の動きが掴めるまで、この州都で待機。それが命令だった。
「サキュバスなんざ、この最新鋭パワードスーツがあれば楽勝よ!」
 部隊の先輩兵士がおだを上げる。
「俺の大砲でひぃひぃいわせてやるぜ!」
 気炎をはき、酒をのみ、時に薬をやり、なんとか戦意を維持する。魔族との戦争なんて、経験したことのないものばかりだ。
 銃は効くのか? パワードスーツは通用するのか? エイラント自慢の戦術魔導弾道弾は何をしてるんだ?
 黙っていると、いろんな疑問と不安で押しつぶされそうなのだ。
 俺はそれにつきあいながら、パワードスーツの使い方や、銃の撃ち方を習った。部隊のほとんど、特に戦闘要員は全員アンドロイドだったらしく、俺は気骨のある人間として気に入られていた。だから、訓練にも快くつきあってくれた。
訓練は、あまり優秀ではなかったが、それなりにこなすことができた。まぁ、兵器は半ば自動だから、人間でも十分あつかえるのだ。
「なぁに、いざとなったら、俺たちの後ろにいろ! 銃弾の一発や二発、受けてやるわい!」
「あにさん、相手、魔族ですぜ」
「ぐむむ。魔法は受けられる自信ねぇな……」
 頼りがいがあるんだかないんだかわからないが、気のいい人ばかりなのは確かだった。
 そんなこんなで一週間過ぎて、ついに、敵襲の報告がきた。
「敵襲だ! ここから数十㎞先の町に魔族が来た!」
「よっしゃ! いくぞお前ら!」
 昔ながらの軍用トラックにのって、その町に向かう。
「おいおい、あれって……」
 戦場が近くなると、なにか巨大な人の影のようなものが、そびえたっているのが見えた。
「ご、ゴーレム! ゴーレム・スーツじゃねぇか!!」
「カレンシアの人型兵器がなんでこんなところに!!」
「み、味方してくれてんのか?」
「違う! あいつ、街を攻撃していやがる!!」
 ゴーレムと呼ばれている巨人は、その長い両腕を街の建築物にのせ、肩部分につけられた砲で、あたりを破壊してまわっていた。砲から射出される弾は目にも留まらぬスピードで大地に突き刺さり、暴風のように周囲を爆砕する。
「魔導投射砲か――! やべぇなあ、ありゃパワードスーツじゃ防げねぇ」
「てか、イージェス級装甲版じゃなきゃお守りにもなりませんよ!」
「おう、車とめろ! これ以上近付くと、あれに狙われるぜ! 戦闘要員全員降車ァッ!」
 隊長の命令に従い、車を飛び降りる。
「幸い、今使ってる弾はただのデカタマだ。より広範囲を破壊するドロタマ使われたら、ここら一帯木端微塵だぜ!」
「じゃあ、いまのうちにやっちまいますか!」
「おうしっ、野郎共! 想定していた相手とは違うが、ゴーレムなら戦ったことあるやつもいるだろ。やるぜ!」
 おおお!! と、咆哮があがる。
「リュカ、お前は、ここに残ってトラックを守れ! やべぇようなら動いて、退路の確保にまわれ!」
「了解っ!」
 俺は頷き、敬礼した。
「よしっ、お前らいくぞ!」
 隊長と共に、部隊が動く。パワード・スーツの戦闘機動を使用し、一気にゴーレムへと肉薄する。
 俺はトラックの上の支援台に登り、双眼鏡で敵の動きを見る。
 もう隊長達はゴーレムの近くまで来ていて、対物ライフルをぶっ放し始めていた。
 ゴーレムは50口径弾を受けつつも、その動きを止めることはなかった。まるで豆粒のように、受け流される。
 部隊は、一人に数発だけ支給されている魔導加速弾に切り替え、乱射から狙撃に変えた。
「お! 効いてる、効いてるぞ!!」
 ゴーレムが明らかに後退した。さがったところにさらに追撃が何発も突き刺さり、肩の砲が支えを失い滑落し、攻撃能力が減退、さらにさらに、頭部と胴体の継ぎ目から煙りがあがりはじめた。
「これなら、いけるんじゃ――!」
 と、俺が快哉を叫ぼうとした次の刹那。
 グォオオオオオ!!
 と、ゴーレムが唸り、両足をおり曲げてしゃがみ、跳躍した。
 一足飛びにその場を離れ、人を戦車をビルを飛び越え、こちらへと迫ってきていた。
「げ! 運転手さん! 出して!! 西に移動!!」
 支援台からすぐ下の運転席に声をかけ、車を発進させる。
 ドゴォオオオオン!!
 ゴーレムが着地したのか、大地が震え、トラックががたがたと揺れた。
「ぅおおおっ!!」
 あわてて、近くにあった魔導パイプをつかみ、パイプが接続してある機関銃席に座る。
「おりゃあああああ!」
 狙いをゴーレムの足元に定め、連射。
 魔力によって補正を受けた弾は、発射口から射出された瞬間、一旦拡散し、目標、ゴーレムの近くで収束して襲いかかる。
 ドゴッ! という鈍い音がして、弾が弾かれた。威力というより角度が悪かったのか、力がうまく伝わらなかったようだ。
「くぅ!!」
 角度を修正してもう一度連射する。
 しかし、車が動いているせいか、修正が利かないほどぶれて、どうにもならない。
 しかも、下手な射撃も俺たちの存在を伝える合図にはなってしまったようで、ゴーレムの丸い目が、こちらを捉えた。
「っくそ! 運転手さんごめん!! 止めて!」
 運転を担当しているアンドロイドが指示に従って、車を止める。
「こっちにゴーレムが気づいたみたいだ。俺がここらへんで引きつけるから、退路をよろしく!」
「わ、ワカリマシタ!」
 震える声でアンドロイド、機械兵は何度も頷き、車を急発進させた。
「くぅう、恐いなぁ」
 車に積んであった対物ビームライフル、自走魔力ジャマー、手投げ弾とかを抱えられるだけ持って、パワードスーツの腰帯に引っ掛けた。
 しかし、これらのいくつがゴーレムに通用するか……。
 音を立てて、建物や車を蹴散らしながら前進するゴーレム。その鈍色の無機質な巨体は、いかにも兵器でござる、といった様子。
 お話の中のゴーレムはたしか、顔に書いてある文字を消せば消滅するんだったかな。
「でも、どこにも文字なんて書いてないしなー」
 双眼鏡で確認したが、書いてあるのは精々、製造番号ぐらいだった。
「自力でなんとか、やるしかないか……!」
 ビームライフルを構える。安全装置を外し、狙いを付け、引き金を引く。魔力で加速変換された中性粒子ビームが、ゴーレムに吸い込まれていく。
 しかし、ゴーレムに搭載されていた浮遊シールドによって減衰され、通常弾程度のダメージしか与えられない。
「うわっ!」
 逆に、反撃のボール弾を足元に受け、転がりそうになったところを、パワードスーツの姿勢維持機能でなんとかたたらをふむだけですみ、あわてて後退した。
「リュカ! 無事か!?」
 隊長達が戻ってきたのか、通信が入った。
「は、はい! なんとか!」
 返事をしている間に、隊長達はゴーレムを包囲し、じわじわと前後左右に動いて敵との距離・位置を微調整しながら、射撃を開始した。
 ――よし、これで――
 と、俺が士気をあげると、ゴーレムが足をとめ、動きを突然停止させた。
「え?」
 そして、腕を横に広げ、単純に振り回した。
「う、うわああああああ!」
 それだけなのに、俺たちは吹き飛ばされ、一掃された。
 人間の数十倍、パワードスーツの数倍はあるというゴーレムスーツのパワーは、俺たちを虫けらに変えた。
「く、ぅうう。いてて」
 瓦礫に倒れ、パワードスーツのディスプレイにうつるダメージリポートを横目に、なんとか上体を起こし、片膝を付く。
 隊長達も、ふっとばされて、倒れていた。
 視界に、足や手、半身を失った兵達の姿がうつる。機械、アンドロイドとはいえ、今のいままで元気に動いていた姿が、無惨だ。
 ゴーレムは、まだ動いている俺の姿を発見し、とどめをさしに、こちらへ寄ってきた。
 ドオォオン、ドォオオン!!
 轟音と共に震動する大地。
「まいったなぁ……まだ巨乳満足に揉んでないってのに」
 脳裏に、レリィやミュアの巨乳、そしてまだ見ぬおっぱいを思い浮かべ、ため息をついた。今までのことが走馬灯のように浮かぶ。
 手元の武器を探るが、さっきので一緒に飛ばされ、どこかへ無くしたようだ。
 残る武器はない。パワードスーツには超近距離用のブレードがあるが、なんてこった、安全装置が故障してロックされている、と警告がでている。
「リュ、リュカ……逃げろ……!!」
 後方から、隊長の声がする。
 顔を向けずに、パワードスーツのカメラで確認したところ、隊長は足をやられ、動けないようだ。
 このまま俺が逃げれば、隊長は、いや、みんなゴーレムにやられる可能性が高い。
 ぐっ、と下がりたくなる足を踏みとどめ、立ち上がる。
 ――どうする? 武器はないんだぞ?
 どくん、と心臓が高鳴る。
 ……いや、ある。
武器はある。
使えるかどうか、有効かどうかわからないけど。
俺には、この、右手がある。
――と、なれば――
俺は、左手をあげ、自分の腰に振り下ろした。パワードスーツの倍力強化機能によって、破壊力はゴリラでも一撃!
 ガギンッ!
 とパワードスーツの腰帯が破壊され、武装固定部が外れて、地に落ちる。
 俺はロックされていたブレードを拾い上げ、その固定材ごと握り、構える。
「リュ、リュカ! 何をするつもりだ!」
 隊長の声を背中に、俺は駆け出す。
 パワードスーツの推進燃料はまだ残っている。最高加速でゴーレムの目の前へ。
 グオオオ!
 ゴーレムが耳を劈く轟音とともに、こちらへと矛先を向ける。
「おりゃああああ!」
 俺は全力で、ブレードを投擲した。
同時に、最後の加速で、ゴーレムの足元へ飛ぶ。
ゴーレムは、俺より、投げられたブレードを優先して、打ち落とした。
その隙に、俺はゴーレムの真下から、足を蹴り登り、ゴーレムの体を上った。
 グオオオオオオオオ!
何をしようとしているのか理解できないのか、ゴーレムはただ身じろぎしただけで、振り落とそうとはしない。
「頼むぜ、俺の、右手ッ!」
 緊急脱出信号をだし、パワードスーツから飛び出る。最低限の衝撃吸収材しかない、戦闘スーツだけ身につけた姿で俺はゴーレムの肩までよじ登り、手袋を外して、
「おりゃああああああああ!!」
 右手を、ゴーレムの頭に押し付けた。
直せるなら、壊せるはずだ。
………………多分!
 グ。
ゴーレムの頭が微動する。
駄目か、と思った。
しかし、次の瞬間、ゴーレムの頭が光り、突如、ゴーレムは足から崩れ落ちた。
「う、うわぁあ!」
 数階建てのビルの屋上から転げ落ちるのも同前の高さで、俺はあわてて空中でもがいた。
「いてっ!」
 衝撃吸収材がなんとか機能して、体が壊れるのは防いでくれた。
「お、おおおおおおお!?」
 隊長達の声がする。
「や、やった!」
 ゴーレムは停止し、もう動かなくなった。
「ん?」
 さっき光っていた頭部が、大地に転がっていた。
 ゴーレムの球形の頭は、もう光は消えていて、そのかわり、まっぷたつに裂けて、内部構造が露出していた。
「……人間?」
 中には、人の姿があった。体にぴったりフィットしたスーツを着た、銀髪の人間。顔はよく見えないが、まだかすかに息があるのか、動いているように見えた。
 俺は駆け寄って、コックピットらしき巨人の頭の中に入り、その人の手を取った。
「……あ……あった、かい……」
 掠れ声をあげたその人は、女性だった。美しい銀髪の、女。息が途切れ途切れで、今にも命がかき消えそうだった。
「!」
 俺は右手を彼女の胸に当てた。
 べ、別に胸を揉もうとしたわけじゃないぞ! それほどこの子胸大きくないし……。
「ん……ああ」
 俺の右手が触れると、彼女の呼吸が安定した。
 目を開けることはなかったが、多分、このまま安静にしていれば、目覚めるはずだ。
「と、ここにいたら、この子、殺されちゃうかもだな。ここから連れてでないと」
 俺はコックピットの固定器具や、彼女の体にくっついているシートを剥がし、頭部の外へと連れ出した。
外へ出ると、何かが反応したのか、頭部が元通りに閉まった。
 俺はお姫様だっこで、銀髪の女の子を抱き、ゴーレムから離れる。
彼女の体は、子供ぐらいの軽さだった。
「おーい! リュカぁああ!!」
 隊長達が、まだ無事だった仲間に抱えられて、集合してきた。
「無事だったか! よくやったぞ、おまえがやったんだろ、ゴーレム!!」
「は、はい!」
「はは、すげーぞ。人間がほとんど生身で勝ちやがった! どうやったんだ!? はっはっはっ!」
 隊長と共に、皆が歓声を上げる。
「で、その娘さんは?」
「はい。避難していた民間人のようです」
「ふーん……なんか変な恰好だが。ま、それなら、病院にでも運ばにゃな」
「隊長! 俺たちもです!
「てか、隊長もです!」
「ふっ、たしかにそうだ」
 はっはっは、とまた高笑いして、俺たちは勝利を喜んだ。
 俺たちはその日の中に後方の病院へと運ばれた。
ゴーレムに乗っていた、彼女も一緒に。



 病院に運ばれた後、俺たちは治療として数日を病院で過ごした。
幸い、俺たちの部隊は、死人もでなければ、中枢部分を破壊されたアンドロイドもでなかった。
全員、数日で完治可能ということで、ほとんど、休暇も同前となった。隊長から聞いたところ、今回の戦いの勲功によって、入院治療とは別に、休暇がちゃんと出るそうだ。
「お前のおかげだよ」
 と、隊長は俺を誉めた。
俺は特に怪我もなく、ピンピンしていた。だから他の隊員を見舞ったり、例の彼女の様子を見に行ったりした。
だから、彼女が目覚めたとき、最初に目に入ったのは俺の顔だった。
「え?」
 彼女は、ぽかんと口を開き、状況が理解できないのか、きょろきょろとあたりを見渡した。
「ここは病院だよ」
「病院?」
 彼女は透き徹るような声をあげ、こちらをじっと見た。
「そう。エイラントの病院」
「…………私のゴーレムは」
「全部壊れたわけじゃないけど、今はエイラント軍が鹵獲してる。君の手元には戻らないと思うよ」
「違う」
「え?」
「私は、ゴーレムがいないと、生きていけないの」
「へ?」
 無垢な瞳。何の感情もあらわさない表情。しかし、ほんの少し、疑問の色が、見え隠れしている。
「私は、ホムンクルスなの」
「ホムンクルスって……たしか、人造人間、だっけ?」
「そう」
 古の魔術によって生成される人工の生命体、ホムンクルス。伝説には聞いたことがあるが。確か、人間の精液とかから生まれ、フラスコの中でしか生きられないとか――
「私は、ゴーレムの中でしか存在できない命。決して外に出られない、兵器のための生命体」
「……そんな、馬鹿な」
 笑い飛ばしたくなるが、彼女の目は全く嘘を言っていない、まっすぐな目だった。
「どうやって、私を連れ出したの?」
「……手を使って」
「手?」
 彼女は、俺の手を見た。
「ゴーレムで戦っていた最後の記憶に、あなたの顔がある。そして、手。誰の手かはわからなかったけど、あったかかった」
 彼女は、きゅっと、俺の右手を握る。
「母様に聞いたことがある。神聖魔手。その手に触れられれば、私も、自由になれるって」
「神聖魔手?」
 こく、と彼女は頷く。
「魔族の王が持つ、魔法の手。ありとあらゆる不思議を為す、特別な手」
「…………俺の手が、それだって?」
「それ以外、考えられない」
 俺は、神聖魔手とか魔族の王とか、初めて聞く言葉に戸惑った。たしかに、魔族、というやつがいるというのは聞いたことがある。現代の人間の血にも、魔族の血がある程度混ざっているらしい。
しかし、実際に魔族なんて見たことなかったし、ましてや俺が、それの王だなんて。
 思案にふけっていると、ふと、なにか熱っぽい視線に気づき、顔を上げた。
「あなたの名前、なんていうの?」
 さっきまでほとんど変化のなかった瞳が、蕩けていた。
「リュカ。リュカ・テンマだ」
「リュカ……リュカ様」
「え」
 リュカ様なんて生まれてからこっち一度も呼ばれたこと無いぞ。あ、いや、養母のアンドロイドにはたまにそんな呼ばれ方したような気がするが。
「私の名前は、ユーエリカ。これからは、あなたにお仕えいたします」
「えええええ!? 仕えるって?」
「今までは母様に仕えていたけど、母様は言っていました。魔族の王に仕える事が、我らの存在理由だ、って」
「うーん、だからって、そんな……ええっと、家族じゃだめかな」
「家族?」
「うん。俺、姉はいるけど今離ればなれだし、他に家族もいないんだ。だから、そうだな、妹にならないか?」
「妹……リュカ様の……」
 と、ユーエリカは、その言葉を飲み込むように、頷く。
「はい。これから、私は、リュカ様の妹です」
「……うん。それじゃ、これからよろしく」
 右手を差し出し、握手する。
 こうして、この日、俺に新しい家族が増えた。
名前はユーエリカ。不思議な雰囲気の、可愛らしい妹だ。



数日後、部隊に正式な休暇の許可が下りた。
死者はなかったものの、武器やパワードスーツの消耗が激しかったため、一週間も休暇がもらえた。
二、三日だったら屋敷に帰らずに過ごそうと思っていたが、一週間となると帰って顔を見せたくなる。
「ただいまでーす!」
 というわけで帰ってきた。
「お帰りなさい。リュカ。あなたが一番早く帰ってくるなんてね。しかも功績をあげたんだって? すごいじゃない」
 レリィさんと黒服達が出迎えてくれた。
「…………で? そっちの娘は?」
 と、俺の後ろに立つ、少女に視線を向ける。
スーツを脱ぎ、シンプルなワンピースを着て立つその姿は、どこかのご令嬢のようだった。
「ええっと、妹のユーエリカです」
「い、妹!?」
 俺は戦地で再会した妹の話を適当にねつ造した。
「そういうわけで、この子も置いてやってくれませんか。給料は俺と半分でいいですし、部屋は、俺屋根裏とか倉庫とかで良いんで」
「わたし、兄様と一緒の部屋でいい」
「に、兄様!?」
 人前でリュカ様はやめて、といったら呼び方が兄様になった。
「……まぁ、私は良いけどね」
 と、レリィは肩をすくめる。
 幸い、フェリドスがユーエリカの雇用を決め、給料はそのまま、部屋は別々になった。
しかし、ユーエリカに関して、なぜかミュア様がなんだか微妙な顔をしていて、ちょっと不満そうなのが気になった。
ともかく、ユーエリカはデッカート家で働くことになり、より賑やかに、華やかに、俺の日常は変化した。
 神聖魔手。
 その存在が、俺の人生を大きく変えようとしていた。
でも、まぁ、なんとかなるだろう。
少なくとも、命は長らえたし、悪くはならないさ。
俺は、お気楽な感じで、境遇の起伏を歓迎した。
「働けて、十分な食事があって、こうしてベッドで眠れるだけで満足だしな」
ふわっと雲の上のような寝心地のベッドに潜り込み、寝る体勢に入り――
「ん?」
 違和感を覚えた。
大きめのベッドと布団だからわかりにくいが、何かが布団の中にいるような?
「リュカ様……」
「おわ! ユーエリカ!!?」
 電気を消した暗闇に浮かび上がる、白い髪。蓄光素材が淡い光を室内に灯しているため、なんとかユーエリカの顔ぐらいはわかるが、細かい表情までは読み取れない。
しかし、彼女の肌は、どこか、上気して火照っているように見えた。
つ、と小柄な体に似付かわしい、細作りの指が、俺の体に触れた。
「ど、どーしたんだ、こんな夜中に」
 もう家人はほとんど寝ていて、起きているのは宿直の警備要員ぐらいの時間帯だ。もしかしたらフェリドスがまだ起きているかもしれないし、レリィが自室に下がった所を見たことがなかったりするが。それはともかく。
「もう寝る時間だぞ?」
ベッドの上、布団をのけて上体を起こしたユーエリカの顔を見上げて言う。
「はい」
 素直な返事に反して、ベッドから降りようとはせず、それどころか俺の体の上に乗って動きを止める。
「眠れないのか……?」
 家族とはいえ、まだ数えるほどの日数しかたっていない。彼女の表情や行動からなにもかも知るのはまだ不可能だった。
「いえ……ただ……」
 消え入りそうな、屋敷の外の、葉擦れの音と勘違いしそうな声。
言葉で意志を伝える自信が無いのか、彼女は行動で示した。
 すっ、と俺の上体を撫でていた手が消えたと思ったら、もっととんでもないところを触りだしたのだ。
「うおっ……!」
 腰に電流が走り、びくん、と俺は震えた。
ユーエリカの指が、陰茎に触れていた。
「ええっと、ユーエリカ? 何をしてるのかな?」
 と、俺が質問している間にも、すり、すり、と指が男根の筋にそって触れ、その気がなくともだんだんと硬さを増していくのが自分でもわかる。
「私は、戦闘以外、これぐらいしか教わらなかったから」
「……いやいやいや、何を教わってんだ君は」
 ユーエリカは、まだまだ女未満。ミュア様より幼く見える。胸も余り膨らんでいないし、その他の成長具合だって似たようなものだ。
そんな彼女に、性的な欲望を抱くなんて……ちょっとだけだ。ちょっとだけ。
「魔族の王への、ご奉仕、だそうです」
「俺はそんなんじゃないって」
 俺の言葉を無視して、寝巻の上から何度も何度も、指から手の平全体をペニスに重ねて、撫でさする。
寝巻の上からでも明らかにわかるほど勃起すると、ユーエリカは俺のズボンを脱がしにかかった。
「ちょっ……」
 待て、という命令が出かかったが、すでにズボンは下ろされ、あろうことか一緒にパンツも脱がされていた。
月明かりと、夜光塗料の淡い光の下、未知の生物のようにグロテスクな男根が、あらわになる。
「これが、リュカ様の……本物ははじめてみました」
 と、熱を帯びた視線をあび、ペニスがびくんと脈動する。
それが、愛撫を促しているように見えたのか、ユーエリカは慌てて男根を手の平のうちに収め、上下に動かしはじめた。
「うぁ……」
 思わず声が漏れる。繊細な手つきなのに、きっちりとポイントをおさえた愛撫。自分でやる時でも、こんな上手くできないかも知れない。
しゅ、しゅっ、と静夜に響く、淫靡な音。やがて亀頭からカウパー氏腺液が滲み出て、水音が混ざり、さらにいやらしい音へと変わる。
ず、ちゅ、じゅ、くちゅ。
「ん……ふ、ん……」
 匂いや熱にやられたのか、ユーエリカの呼吸が荒くなる。
「リュカ様……気持ち、いいでしょうか?」
 と、ユーエリカは手を動かしながら、上目づかいで尋ねる。
「ああ……気持ちいいよ」
 認めざるをえなかった。
血が繋がっていないとはいえ、家族に何やらせてるんだろ……。まぁ、俺には血の繋がった家族なんていないから、その手のタブーはよく分からないが。姉さんも、家族ごっことは言わないけど、あだ名みたいなものだったしな。
「……ん、口も……いきます」
 ユーエリカは、顔をペニスに近付け、一瞬どうすればいいかためらった様子を見せたが、やがて口を開き、舌で亀頭に触れ、ゆっくりと、舐め下ろして、根元までキスした。
ぞくっ、と甘い痺れが走り、射精の予感が、ゆらゆらと揺蕩う。
「れろ……ちゅ」
 一度ふれてしまえば、もう、ためらいはないのか、大胆に、色々と舌とくちびるを動かしていく。
「ちゅう、じゅ、……ん、ちゅ」
 亀頭を咥えて、口内でしごいてみたり、舌で鈴口をなめ回してみたり。
「んぁ……ん、ちゅうぅ、じゅっ、ぷ、んぁ、はぁ……」
 息継ぎも忘れるくらい、口を、生殖器のかわりにして、陰茎をとろけさせる。アイスキャンディーだったら、支えている棒に染みこんだ蜜まで啜る勢いで。
「っ、ぅ……これ以上は、やばい……」
 こみ上げてくる。
 なんとか気を逸らすため、愛撫に集中しているユーエリカの髪を梳かし、彼女の小さく、整った顔が、フェラチオでちょっと滑稽なぐらい歪むのを、見つめる。
「っ、ちゅ、くちゅ、れろ、ちゅぷ……んん」
 舐め、口づけ、なぞり、撫で、音を立てて吸い、思いつ限りの愛し方で、ペニスに接っする彼女の顔をみていると、愛おしさがわき上がってくる。家族としてだけではなく、性的な意味でも。
「ユーエリカ、こっちおいで」
「……? なにか、まずかったですか」
 少し不安そうな表情で、俺の顔をうかがう。
「いや、我慢できそうにないからさ。もう、しちゃおう」
 家族としての関係は一旦脇に置いて、男と女としての関係を、もってくる。
「……はい」
 ユーエリカは、こくん、と頷き、俺の腰の上に跨る。
 手を伸ばし、彼女の体に触れる。ワンピースタイプの下着越しに触れる肌は、とても熱く、彼女自身の興奮をあらわしているようだった。
 下着の肩紐を外し、小振りな胸を、じかにもみほぐす。
 んー、やっぱり、ちいさいな……
 せめてもう少し、大きければ。最高に興奮するのだが。おしい。実におしい。
しかし、もうそれだけでは俺のやる気を止めることは出来ない。
 きれいなラインを描くおっぱいを、激しく、しかし優しく、愛撫する。手の平で、指で。乳房をもちあげ、揉み、乳首をつまみ、こすり、なでる。
「ん、ひぁ……」
 その刺激に、今まで聞いたことのない声を上げるユーエリカ。
「胸、こうするの結構好きだったりする?」
「ぃ……ひ……ぃえ……そんな、ことは……」
 おっぱいへの攻撃の手を休めずに、ユーエリカの反応を楽しむ。触れるたびに、ぴく、ぴく、と震えが返ってきて、楽しい。
んー、両方同じようにさわってるのに、右手の乳首のほうが勃ってる……。
神聖魔手とやらの効果だろうか。
……じゃあ、こうしたら、どうなるんだろ?
右手で、少女の桃色の乳首を、ちょっと力を入れてつまむ。
「ひっ……!」
 ユーエリカは息をのみ、一拍遅れて、
「んぁああああ!!」
 悲鳴を上げて。こちらに倒れ込んでくる。
「ごめん、痛かった?」
 それを受け止めて、頭を撫でる。
「い、え……なんだか、あ、熱い痺れがおっぱいの先から腰まで来て、な、なんだか、力が……抜けて」
 うーむ、これが軽い絶頂ってやつだろうか。恐るべし俺の右手。
「じゃあ、俺が上になるから、続けようか」
「は、はい……」
 体勢を入れ替える。と、顔と顔が近付いた。
そういえば、キスとかしてなかったな。順序があきらかにおかしい。
 俺は少女の頭をかき抱き、唇に唇を重ねた。かたさのないピンクの花唇が、口づけで花開き、男を招き入れる。
舌が、ユーエリカの口の中へと入った。
最初からディープキスってのもどうなのかと思ったが、今更舌を戻すつもりもなかった。舌で舌をからめとり、交ぜ合わせる。舌という、同じ機能を持つ器官なのに、ユーエリカのそれは、キスのためにあるのではないかと思うぐらい、俺の舌に快楽の刺激をまきつかせた。
 目を閉じ、集中しているためか、快楽が直接脳にくる感じがする。
「ちゅ、ちゅぅ……ぅ、んあ」
 一旦舌を抜くと、それをおいかけて、ユーエリカの舌が伸びた。互いに口から舌を出して、触れさせるという、はたからみたら奇妙な光景だが、それはいやらしく、見えないディープキスよりビジュアル的には俺の股間にきた。
「れ、ろ……ふぁ……ちゅぷ……」
 俺の舌を、さっきのフェラチオみたいにして、繰り返し愛撫する。唾液が先走りか精液のように垂れるのを、彼女は啜り、嚥下した。
「んぁああ……」
 まるで犬のように、舌を出して、何かを哀願する少女の姿に、俺はもう我慢が出来なかった。
 手で、彼女の腰から下、女陰のある位置の下着を、撫でる。
 まだ陰毛の生えていない……というか生えることがないのかもしれない柔肌。その下には、陰核があるのだろう、と、あたりをつけて指を擦り付ける。
「ひ、ひゃ、っああ!」
 強い刺激から逃げるように、腰を動かす彼女の体を、もう片方の手、左手で押さえて、右手でクリトリスに触れる。
「っいや、ゃ、あああああ!!」
 足を突っ張らせて、快楽を逃がしても、ユーエリカは耐えきれなかったのか、泣き出した。
「ぅあ……っひ……あぅう、……ひっ……く」
「ごめん。やりすぎたかな……」
 小さな体に無理をさせたようだ。
「いえ……、いいえ。私が、まだ、ちゃんと女らしくなれていないから……」
「きっと、慣れれば大丈夫だよ」
「はい……ごめんなさい」
 しゅんとする少女の唇に口づけして、もういちど下に手をのばす。今度は左手で。ゆっくりと。
「あ……ん、今度は……、良さそうです……」
 腰をくねらせ、手の位置を軽くずらし、導いてくれる。
下着をずらし、直接触れる。
つぅ……と、愛液が糸を引いて、濡らしていた下着と肌に橋を架けた。
「んっ……あ」
 指の熱とかたさに驚いたのか、ユーエリカは声を漏らす。
膣口あたりがしっかり濡れているのを確認して、指をひとまず抜く。
「……?」
 ユーエリカは怪訝そうな顔をしたが、俺が陰茎を手にのせ、体位をあわせているのをみて、こくん、と唾を飲み込んだ。
「じゃ、いくよ?」
「はい」
 目を閉じることなく、交わる瞬間をしっかり見ようとするユーエリカ。
俺は、女陰の入口と、自分のペニスの先を合わせると、腰をゆっくり前へ進めた。
「……おお!?」
 先がすぐにひっかかって止まった。めちゃくちゃ狭い。
……これ、入るのかな?
男根を手でしっかり固定し、もう一度。抵抗が少しあって、それでも、少しずつ入っていくのがわかった。
「っ……んっ!」
 痛いのか苦しいのか、ユーエリカは眉根を少し寄せる。それでも、さっきのように泣かないということは、痛みより快感のほうが強かったということか。
右手を、ユーエリカの胸におき、やわやわとした感触を楽しむ。それでユーエリカのほうも、痛みが紛れたのか、険しい表情が安らいだ。
あんまりやると、またかわいそうなことになりそうだし、軽く軽く。
手加減して、汗ばむ肌に指を滑らせる。
「……ん、ふぅ……」
 息を整えて、もう一度、ゆっくりと男根を奥に入れる。今度は抵抗が弱く、このまま全部いけそうだ。ぬるぬるとした膣内、その感触に、俺の愚息は一気に精をはき出してしまいそうだった。こらえて、こらえてようやく全部膣内におさまる。
「ぁ……これで、全部、ですか」
 ユーエリカもそれに気づいたらしかった。
「ああ。よく頑張ったね」
 と、彼女の頭を撫でる。気持ちよさそうに目を細め、足を俺の腰の後ろに回した。
「リュカ様……あとは、どうか、最後まで」
「うん」
 腰を引き、また突きいれる。からみつく肉の襞が、ペニスのあらゆる部分を愛撫する。
「……くはっ、これ、すご……!」
「ん、えっと、気持ちいい、んですか……んん」
「ああ。すごいよ」
 今のところ、性交の快感は俺の方が上のようだ。彼女はまだ初めてで慣れていないし、ちゃんと感じるまで時間がかかりそう――
「私も、気持ちいいです……」
 そんなことはなかった。
優しい嘘、というわけではないようで、彼女のアソコは俺のペニスをくわえこんで、きゅうきゅう、と締め付けを強くし、射精を促していた。
 愛液で濡れそぼった性器はよりスムーズに動き、気持ちよさの間隔を、早く、速くしていった。
きつすぎた女陰はほぐれ、しかし、それでも緩まることはなく、もしかしたら射精が根元で止まっちゃうんじゃないかとすら思った。
そうしたら、射精できないまま、この気持ちいいのが続くのか。
天国と地獄だ。
「あ、ぁあ、リュカ様……お兄様……!」
 ユーエリカは自分からも腰を動かし、快楽を貪った。
「ユーエリカっ、これ以上は、や、やばいかもっ!」
「なかに出して構いません、どうか、私の中にっ」
「……くっ、そんな、そんなこと言われたら、俺っ……」
 どうやっても動きは止まらなかった。
がくがくと、震えるような動きでピストンし、絶頂への階段を全力疾走する。いや、転げ落ちるといったほうが正確かも知れない。止まれないし止まらない。
抜くか――?
最後の最後、射精の寸前で、引き抜くか、そのままかの選択を迫られた。
できれば、両方を選びたいぐらいだ。
人生がゲームなら、ここでセーブしてるところだ。
しかし、それができないなら、俺は――
「出すぞっ、ユーエリカ……! 中に!」
「はい……! 全部、私に下さい……!」
「う、うお……っくぅう!!」
 思わず声が出るぐらいの瞬間的絶頂。
たまりにたまった精を、一気にときはなつ。全部出すまで息が出来ない。
どこかが壊れてしまいそうな、イキかたに、俺はつい、右手の中にあった、ユーエリカの乳房と乳首を、きゅううう、っと強く揉んでしまっていた。
「んひぁああああああああぁ!!!?」
 射精の熱を受け止めながら、神聖魔手の超絶愛撫を不意打ちされ、ユーエリカも絶頂した。
「……ご、ごめんね?」
 射精しおわって、事態に気づいた俺は謝罪するが、ユーエリカには届いていなかった。
「……ん、ふぁぁ、あ……あぁ、ん」
 ユーエリカはぴくぴく痙攣するように、体をひきつらせ、自分の腕で己の体を抱えて、快感の余韻のなかに浸っていた。
「うーん、これじゃ、自分の部屋には帰れないだろうな……」
 俺は諦めて、濡らしたタオルで俺とユーエリカの体を拭き、ユーエリカの体に布団を掛けて、隣で寝ることにした。
「ん、んん……」
 ユーエリカは、体を俺の方にすりつけて、目を閉じた。
「お休み、ユーエリカ」
 俺もまた、彼女の体の心地よさを抱きしめて、眠りについた。



「ゴーレムが、ユーエリカがこんなに簡単にやられるか……」
 部下の報告を聞いて、サキュバスは歯がみした。
「仕方がない。計画は変りはしない。ただ、近道を止めるだけ」
 しかし、不機嫌そうな顔は変わらず、
「エイラントのクズを早々に始末できないのは残念。まぁいい。不安の種はまけた。次は、カレンシアの番だ……」
 サキュバスは、夜の闇の先に、あの北の宝石、カレンシア女王の姿を睨み、顰笑をみせる。
「女王に恨みはないが、誰も赦す気はない。ことごとく尽き果てるまで……!」
 サキュバスは、かなしげな瞳と、笑みを浮かべ、消える。
次なる目標、カレンシアの地へ。


 ―――― つづく ――――



 あとがき

 「巨乳SF?」第1話、いかがだったでしょうか。
 この小説は、18禁ゲーム「巨乳ファンタジー」の二次創作小説です。
 ゲームやったことない人でも楽しめるように書いたつもりですが、どうでしょうか。
 管理人は原作プレイ済みなので、あまり未見の人の感覚わからないので、ちょっと不親切なところがあるかもしれません。
 読んでもわからないところは……できれば原作を見てくれとしか。

 以下、この二次創作をする事になったどうでもいい経緯。
「最近恋姫無双の二次創作しかしてないな……」
 と、金曜日の夜、ベッドの中で思った。
「まぁ、オリジナルなんて誰も期待してないし、それはいいんだが……、同じもの書き続けるのもきついな……」
「そういえば、最近『巨乳ファンタジー 二次創作』で検索してうちのブログに飛んでくる人がたまにいるな」
「多分、『のーぶるわーくす』の『二次創作』ネタと『巨乳ファンタジー』でひっかかっちゃってるんだろうけど」
「『巨乳ファンタジー』の二次創作ネタ、あるんだよなー……でも、時間が……」
「いや」
「やらないよりは、やるか」
 というわけで、次の日から三日間、土・日・月と創作に取りかかり、擱筆。火曜日に修正、公開。
 なんだか楽しかったです、まる。
 でもエロシーン書くのがきつかった。難しかった。
 次はもうちょっとうまく書けるように頑張りたいです、まる。



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