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真・恋姫†無双 ~乙女繚乱☆三国志演義~【新装版】真・恋姫†無双 ~乙女繚乱☆三国志演義~【新装版】
(2010/04/02)
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 欠史1
 華雄(葉雄)伝 ~華の名は~

恋姫†無双 外史『無銘伝』第5話
恋姫†無双 外史『無銘伝』第4話
恋姫†無双 外史『無銘伝』第3話
恋姫†無双 外史『無銘伝』第2話
恋姫†無双 外史『無銘伝』第1話


この外史は北郷一刀が全力でとある少女を救う物語。
一振りの刀に導かれ、一刀は三国志世界へ帰還する――
※PC版の無印恋姫、真・恋姫を元にした二次創作です。





1/陽は落ちて暮れても
2/豪傑葉雄伝
3/葉擦れの音と一緒に
4/華雄尋問ハード?


 1/陽は落ちて暮れても

 董卓軍が洛陽を焼き払い撤退した後、洛陽郊外で、劉備軍と天の御遣い、北郷一刀が合流した。
 一刀は、見た目なんの変化もなく、桃香達と共に陣を張り、都の消火活動を指揮していたが、よくよく見ると、憔悴した雰囲気が滲み出ていた。
「大丈夫かな……」
桃香や愛紗が不安そうな声で囁き合っている。
「ふん」
葉雄は――前の名を華雄という劉備軍の将は、それを横目に、北郷一刀の元へ歩みよった。
「ん? どうかした、葉雄?」
 葉雄の見たところ、一刀に変わった様子はそれほど見られなかった。じっと見続けてかすかに感じ取れるぐらいだ。
(共に過ごした時間の違いか)
 葉雄はちょっと不機嫌になった。
「何かあったのか」
「……あはは、皆から心配されてるなぁ」
 一刀は頬を掻いた。
「董卓、いなかったな。それがちょっと残念だなぁ、なんて」
「はぁ? それだけか?」
葉雄は肩をすくめた。
「それはそうだろう。一軍の主が、燃やすと決めた都に最後まで残っているわけがない。長安にとっとと撤退したに違いない」
「……うん。そうだよな。うん」
 北郷一刀は、素っ気ない葉雄の言葉に、なぜか嬉しそうな顔をした。
「お前……まさか、董卓と面識があるのか?」
「内緒だよ。……あっちは俺の顔知らないけどね」
「……?」
 葉雄は首を傾げ、しかし、それ以上質問は重ねなかった。
 劉備軍は消火を続け、燃えても壊れてもいなかった主無き屋敷を仮に接収して、一息ついた。
「明日は私の元部下たちにも手伝わせて良いか?」
 庭に据えられていたベンチに座り、遠くの空、日が沈みつつある赤い空をぼうっと見ている一刀の隣に、葉雄は座った。
「ん……そうだな。問題はないと思うよ。武装は解除してあるしね。念のため、桃香と朱里の許可を得てくれ」
「わかった」
 2人は並んで、黄昏の空を眺めた。
 昨日今日、血や炎を見飽きるほどに見てきたせいか、夕焼けはどこか苦い。
 葉雄は、感傷的になっている自分に気づいて、苛立ちをおぼえた。
――こいつが隣にいるせいだ――
「お前がそんな顔をしていると、癇に障る!」
 葉雄は立ち上がって、人差し指を一刀の目の前に突きつけた。
「な、なんだよ急に」
 一刀はあっけにとられて、後ずさった。
「辛気臭い顔をした将のもとでは部下も働きたがらん。ただでさえ、天の御遣いなどというわけのわからんあだ名なのだ。もっと、鷹揚に構えろ」
「そんなひどい顔してるかな」
「ああ。おまえたち……いや、わたしたちは勝ったのだろう? 喜ばなくても良いが、もっと余裕のある顔をしろ。こんな夕空でも、いまから一日が始まるぐらいの顔でいろ!」
「う、うん」
 自分の顔をなでさすり、一刀は薄い笑みを浮かべた。
「こんな感じかな?」
 嘘くさいその笑顔に、葉雄はぷっと吹き出した。
「気色悪い!」
「な、なんだそりゃ!」
 一刀はがくっと肩を落とすが、あっはっはっ、と大笑する葉雄の顔を見て、一刀も思わず相好を崩し、互いに笑い合った。
 陽は落ちて暮れても、暗闇の中、花は花としてあるように。
 戦に疲れ果てても、微笑むだけの、最小にして最大のエネルギーは、ちゃんと残っていた。
 それを喜ぶように、2人は長く、笑い合った。


 2/豪傑葉雄伝

 虎牢関の戦いが終わり、董卓軍が長安へと撤退してからしばらくたった、とある日。洛陽へと続く道を歩く、1人の女の姿があった。
 大股でずんずんとまっすぐ歩む女の姿は、出で立ちこそ他の町娘と変わらないものだったが、その奥に潜むただならぬ雰囲気は、まぎれもなく、武将のそれだった。
 彼女の名は葉雄。昔の名を華雄という、劉備軍の将である。
 かつては董卓軍に身を置く歴戦のもののふであったが、水関で北郷一刀によって討ち取られた、ということになっている。公には、華雄という名は死んだ名だ。
 彼女を捕縛した北郷一刀が、咄嗟の機転で死んだことにし、名前を変えて、仕えさせたのだ。
 華雄改め葉雄は、それ以後、装いも変えた。軍装を肌の露出の少ない、大人しい物に変え、髪も少し伸ばした。遠目から見れば、董卓軍の昔馴染みであってもわかるまい。
 とはいえ、性格や行動は外見ほどすぐに変化しない。
「他軍に気づかれないようにしていてくれれば、いつもの華雄でいいよ」
とは、主、北郷一刀の弁である。
 しかし、葉雄も、少しはその点を気にしてはいるようで……
「っと!」
 何かに気づいたかのように、葉雄は立ち止まり、すぐにまた歩き出した。今度は、ゆったりとした、常人にとって普通ぐらいの歩幅で。
「普通……普通か」
 葉雄は頭を掻いた。
 劉備軍の軍師、孔明や鳳統に尋ねたところ、目立たないように、とは、普通に、ということらしい。そして普通とは、普通の女のように、ということらしい。
「普通の女……」
 別に董卓軍の武将であったときも、女を捨てたわけじゃなかったのだが。
 「女らしさ」なんてものは、他者の勝手なイメージに過ぎず、葉雄はそんな他人の押しつけがましい形式を拒否しつつ、自分の中の理想の女像を実現したつもりだった。
 だが。
「女らしく、か」
 なぜか、あの男の顔が脳裏に浮かんだ。慌ててぶんぶんと首を横に振る。
「阿呆らしい」
 と、言いつつも、豪快な歩き方には戻さず、静々と音も立てないぐらいの歩みのまま、洛陽城内へと入る。
 洛陽の都城内は、連合軍の修復によって、ある程度回復していた。
 袁紹や袁術は飽きたのかほとんど関与しなくなったが、劉備や曹操、孫策が中心となって、今も修復が続いている。
 反転攻勢を狙っている董卓軍の呂布や張遼に対抗するため、外城、出城、砦を増設、修復し、やや安全になってきた洛陽には少しずつ人が戻ってきていた。
「お?」
 葉雄は足を止めた。
 その視線の先には武器屋があった。
 軒先には新しい槍とか矛、剣がそろっていた。武器は各軍の管理下にあるので売買は禁止されているはずだが、予備を含めて大量に必要になるため黙認されているようだ。
 とはいえ、弓矢、弩のような遠距離武器は優先して軍に流されているのだろう、まともなのは見あたらなかった。
「お、なにかご入り用ですか? 護身用で?」
 葉雄の様子を見て取って、店の主人の親父が近付いてきた。
「ん、いや……そうだな、何があるか見せてくれるか」
 お気に入りの自分用の戦斧、金剛爆斧は修理中だ。一刀に柄を斬り飛ばされてしまったこともあるが、華雄の象徴ともいえる武器で目立つため、急いで直す気もなかった。
「では、お客様なら……と、こんなのはどうです?」
 一振りの剣を、親父は差し出した。小刀と大刀のあいだぐらいの剣だ。
「なんだそれは?」
「なかなか良い物ですよ。片手剣としては大きいですが、女性でも扱いやすい両手剣で――」
「小さすぎる」
 葉雄は片手でぶんぶんと振った。
「え」
 ぽかん、と店の親父は口を開いた。
「戦用の斧か槌がいい。60斤以上だ」
「ろ、60斤!?」
 60斤以上となると男用としても重い。
「で、では店の奥から出してきますので、少々お待ちを……」
 当惑した表情を抑えきれないまま、店主はひっこんだ。
「……はっ!?」
 葉雄はそれを見て何かに気づき、慌てた。
「こ、これが普通じゃないということか!!」
 まぁ、普通ではないだろう。60斤となると、10キロ以上の重さになる。持つのは無理ではないが、使うのは無茶である。
 葉雄にとっては楽なものだし、劉備軍の関羽や張飛はそれ以上の重さの得物を軽々振り回すが……。
「ぐむむ……」
 女らしい、普通の武器とはさっきの剣のようなものなのだろうか。
 だがあれでは玩具みたいで、頼り無いのだが……。
「……」
 葉雄は服を捲って、腕を露出した。
「筋肉……いや、そんなにはない。ないはずだ」
 さわってみるが、筋肉の堅さのうちに柔らかさのある、女性らしい腕だった。だが、葉雄には他の女性の標準がわからない。
 さらに服の裾に手を入れ、他人に見えないように、おなかの肉を触ってみる。
 無駄な脂肪のない引き締まった肌。つまんでも、皮ぐらいしか引っ張れない。つつくと、ほとんど沈まず、はね返される。
「これは、いいのか?」
 駄目だ。わからない。もういちど孔明達に訊くべきかも知れない。いや、関羽や劉備に訊いてみようか……。
 関羽は自分と同じぐらいの体型で同じ武人だし、劉備は体型が似ていて半ば文官。良い比較対象になるかもしれない。
 朱里、雛里は頭は良いが、小柄なうえ文官で、共通点がない。鈴々は小柄で武官、比較も難しければ、助言も期待できないだろう。
「あいつは……どっちがいいんだ?」
 小さいのと大きいの。かためとやわらかめ。
「……い、いや、あいつは関係ない! あいつの好みの問題じゃない!」
 また首を横に振り、一刀の顔を頭から追い出す。
「あ、あの~、持ってきましたが……」
 店主と店員が、2人がかりで持ってきた戦槌を抱え、怪訝そうに葉雄を見ていた。
「む」
 こほん、と咳払いして、それを受け取る。
「おお!」
 2人で持っていた大槌を、1人で持ち上げた姿を見て、店主達は驚きの声を上げた。
「振ってみるから、少し離れていろ」
 よけてもらって、安全を確認してから、振り上げ、振り下ろす!
 ぶおん、という風切り音のあと、戦槌は地上すれすれで止まった。
 無理矢理持ち上げて落とすように下ろしたら、確実に地面に激突していただろう。それを防ぎ、戦槌をとめたのは、紛れもない葉雄の力だ。
「おおー!!」
 喝采と拍手が響いた。観客は2人しかいないから地味なものだが。
「なかなか良い物だな。これをもらおう。劉備軍の本営に、葉雄の名で運んでくれ」
「かしこまりました」
「……それと」
 口ごもりつつ、ちらり、と店先を見る。
「さっきの剣、女用だったな?」
「は、はい」
「では、あれも……いや、あれは護身用だったな。壊れやすいのではないか?」
「はい。確かに。作りはよいので良く切れるのですが、何かにぶつけてしまうと、欠けやすいものです」
「戦用の長刀……いや、いっそ短剣にしよう。それなら荒く使って壊れても、複数携行していけば問題ない。短剣を見せてくれ」
「はい!」
 店員がそそくさと店先に並べた短剣を数本かきあつめ、持ってくる。
「ふむ」
 そのうちの1本を握り、華雄は肩の辺りまで持ち上げ、振り下ろし――
 スポッ
「あ」
 すっぽぬけた。
 短剣は空を切り裂き、路地を隔てた向こうの壁にぶち当たり――突き刺さった。
「…………え」
「おっと」
 軽く放っただけなのに、思い切り投擲したぐらい深々と突き刺さった。
「刺さってしまったな。すまん。金はあれの分も払う」
「い、いえ」
 あらためて、もう一振り短剣を握り直し、葉雄は思案した。
(今、たまたますっぽ抜けて突き刺さったが、投擲武器としては、ありかもしれんな)
 葉雄は、店員の手に短剣を戻す。
「や、やはり軽すぎますか」
「いや、これでいい。これと同じ物を、そうだな、とりあえず10本、さっきの槌と同じ所に同じ名で頼む。ではな」
「はいっ!!」
 店員達は直立不動で葉雄を見送った。
(ただひとつの武器にこだわるのもいいが、様々な武器に精通し、手練手管をもって戦う姿というのも、女らしい、かもしれん。うむ。)
 その日以降、劉備軍に葉雄という名の豪傑あり、という噂が流れ始める。
 しかし、劉備軍ならよくあること、というツッコミによりその噂は沈静化されたという。


 3/葉擦れの音と一緒に

 連合軍が洛陽を占拠して少し後。
 劉備軍がねぐらとしている屋敷にて。
「ふぅ~」
 朝から昼にかけての中庭での修行を終えて、華雄は水を飲みに厨房へと向かっていた。
 訓練用の重い槌を振り続けたせいか、汗が全身から吹き出ている。
「あ、葉雄さーん」
 誰かに呼ばれて葉雄が声のしたほうへ向くと、朱里が手を振っていた。
 中庭の隅につくられた東屋で、朱里と雛里がお茶をしているようだった。
「おお」
 片手をあげて、葉雄は東屋へと足を向ける。
 東屋は小高い丘の上に作られていて、庭を見ながら休むのに適していた。
「軍師2人そろって休憩とは、珍しいな」
「はい。最近ようやく政務も軍務も落ち着いてきているんですよー」
 雛里が答える。
 2人は同じ軍師ではあるが、どちらかというと朱里が政務担当、雛里が軍務担当という役割になっている。
「……」
 貴重な優雅な一時の邪魔にならないか、と、葉雄は少し、近付くのを躊躇した。
「? 葉雄さん? こっちに水を汲みましたよ?」
 朱里が首を傾げる。
「ん、いや、訓練の直後だから、ちょっとな……」
 匂いが気になるらしく、葉雄は二の腕を顔の近くに持っていき、鼻をひくつかせた。
「あ、汗ですか」
 雛里がぴょこぴょこと動き、真新しい白布を持ってくる。
 受け取った布で手早く汗を拭い、朱里が差し出した水を一口二口。そうしてやっと落ち着いた。
「すまんな」
「いえいえ」
 笑顔で応える朱里と雛里を前に、やはり劉備軍は董卓軍と違うな、と葉雄は思った。
 董卓軍の将は、呂布をはじめとして、粗暴とまではいかないが、他人をそこまで気遣わない。あえていえば、総大将である月――董卓が1番人をよく見て配慮するが、総大将であることもあって、あまり近しく接する機会がなかった。
 劉備軍は、トップである劉備・北郷からして親しみやすい性格だし、部下も、関羽は例外として、みんなどこか人なつっこい。関羽も、劉備や北郷が認めた人物なら、そこまで刺々しくはしない。まぁ、無闇に北郷と接近したりすると、嫌な顔をするが。
 (こういうのも)
 と、葉雄は思う。
 女らしい、と言うのだろうか?
 劉備軍に入って一月も経っていないが、その人当たりの良さは、折に触れて感じられた。最初はその軟弱さに苛立ちも感じたが、ゆっくりとしみわたる湯のような心地好い関係は、それほど悪くない、と葉雄は結論した。
 とはいっても、葉雄自身が、その真似事をしようなんて思ったりなんてしなかったのだが……。
 葉雄は、目の前の、2人の少女を眺める。
 2人は、お菓子をつまみながら、お茶を飲み、くつろいでいる。互いに持ち寄ったお菓子を交換し、他愛ない話を泡のように浮かべて、この時間を楽しんでいる様子がよくわかる。
 その仕草一つ一つが、愛らしく、少女らしい。
 それは換言すれば、弱弱しいという事でもあるし、極言すれば、子供っぽいような気もする。
 むかしむかし、自分も、あんな時代があって、そしてそれを踏み付けて忘却して今の自分になった。――どこか胸が締め付けられるような、懐かしさがあった。
 それは唾棄すべきものだと、思っていた。
 強くなければ、生きていけないのだから。
 生きていけない、弱いままでは駄目なのだから。
 だから、葉雄は、軍師というものを軽んじる傾向があった。1人では兵卒にも劣るその存在を。
 けれど、これはこれで――
「ぱくぱく……もぐもぐ」
「こくこく……ずずー……ぷはー……」
(いいかもしれない……)
 小動物チックな2人を見守りつつ、葉雄は、1人微笑した。
(体型からみれば董卓軍の陳宮や賈駆と変わらないが、この2人は角が無くて丸っこいというか……いや、太っているわけじゃないが)
「あ、葉雄さんもどうぞー」
 と、茶とお菓子をすすめられる。
「ああ」
 甘い餡を包んだ饅頭や、果物をつまみ、茶をすする。2人にならい、あまり豪快にならないように、少しずつゆっくりと。
 それから少し、歓談する。
 話題は特に意味のあるものではない。
 庭にはいりこんできた猫の話だとか、いついつ庭の花が咲きそうだとか、桃香様が寝惚けてご主人様の寝所で一緒に寝てたとか――
 最後の話は微妙に聞き捨てならなかったが、そんな話ばかりだ。
 葉雄は訓練直後で疲労していたし、朱里と雛里は根を詰める仕事の合間だったし、重い話ができる状況ではなかった。
 そんな流れで、
「2人はどういう経緯で、劉備と北郷のところに来たんだ?」
 過去の話に触れた。
 ちょっと繊細な話題かと思ったが、2人はあっさりと答えてくれた。
「荊州からか……それは遠いな。仕えるべき主を見つけて、か。それで何百里も行くお前たちもすごいが……北郷はよく一目で2人を仲間にしたものだな」
 荊州から幽州までの距離、ざっと900㎞。
「はい。ご主人様は、私たちの名前を聞いて、この2人なら、自分たちの助けになってくれると信じてる、って」
「名前を聞いて……」
 ふと、何かを、葉雄は感じた。違和感、というか、気付き、というべきか。
「まるで、自分たちを前から知っているように、か?」
「は、はい! たしかに、そんな感じでした!」
 我が意を得たり、という調子で、雛里がこくこく頷いた。
(奴は董卓も知っている風だった。だが、董卓の方は自分の顔を知らないだろう、とも言っていた……)
 葉雄はただ胡散臭いだけだと思っていた男の、影を、踏んだ気がした。
(天の御遣い、か)
 黄巾党、太平道教祖と似た印象しか抱いていなかった、その名称が突然、真実味を帯びてきた。
 葉雄は唾を飲み込み、深くそのことを考えようとしたところで、
「葉雄さん――華雄さんはどうして董卓軍に入ったんですか?」
 と、朱里が尋ねた。
「ん?」
 風が一陣、さぁっと吹いて、庭の木々が葉を触れ合わせて涼やかな音を奏でた。
「あ、言いづらい事ならいいんです……あの」
 朱里は葉雄の顔色を窺う。
「いや……大した理由ではない。お前達ほど理想に燃えていたわけでもないし、誰に望まれたわけでもない」
 こくり、と茶を一飲み。
 唐突に、あたりが静かになった気がした。
「私は関中……長安あたりの出身で、董卓や馬騰、韓遂なんかが周辺に勢力を誇っていた。と、いっても、小さな軍閥も多かったし、異民族なんかも入り込んでいた。私は、無名の軍閥で暴れ回っていた……賊や黄巾を相手にしてな。たまたまだ。時機が違えば、私が黄巾を身につけていただろうよ」
 また風が鳴った。
 目を閉じれば、駆け抜けた黄土が蘇ってくる。
「黄巾の乱が終わる頃、黄巾との戦いに敗北して帰ってきた董卓軍と、韓遂の戦いが起こった。涼州叛乱だ。私は、韓遂側に着いた。これも別にどちらが正義だからとかではなく、より力を示せそうな方を選んだだけだ。疲弊してはいるが数も質もそろっている董卓軍を吸収すれば、韓遂は馬騰と一緒に関中を制することができる、そんな気はしていたがな」
 茶を飲み干して、杯を下ろす。卓にあたって、カチン、と剣戟の音を思わせる、高い音が響いた。
「結果は……董卓軍の圧勝だった」
 空っぽの杯に茶のかわりに水を注ぎ、口を湿らせる程度に飲む。
「まだ私は一軍の将ではなかったが、一隊の長ではあった。わけのわからないうちに負けて、ばらばらになった兵をまとめて反撃したが、あえなく包囲されて降伏……おまえたちの時と同じだな」
 ふ、と華雄は苦笑した。
「そして、董卓は、やはりお前達と同じ……私を助命した。そして私は、特にすすめられたわけでもなく、いつのまにか、董卓軍に入っていた。董卓軍は、その後も戦いを続けて、董卓の軍はいつのまにか以前の数倍に膨れ上がった。軍閥、匪賊、異民族、多くが董卓軍に制圧されて、吸収されていった。……そこらへんは、多分お前達も知っているだろう?」
 朱里と雛里は、黙って頷いた。
 もう董卓軍に入った理由は語り終えていたが、華雄は、話を続けた。
「その巨大化を危険視した中央は、董卓軍の解体を命じた。まぁ、当たり前だな。元々は官軍だ。だが、すでに董卓にとって、配下の軍は……大事な、仲間みたいなもの、だったようだ。手のかかる、厄介な、どうしようもない奴らだけどな。……私も含めて。董卓がいなければ1つにまとまらない。韓遂や馬騰に引き渡せば……なんて言える状況じゃない」
 風音が止んで、華雄の声だけが、はっきりと響いて空に溶けていくようだった。
「朝廷は、并州牧の地位と引き替えに、再度、軍を解体せよと命じた」
 并州は、洛陽のある司隷の北、涼州の北東に位置する州だ。
「異民族が暴れ回る并州に、空手で入れるわけもない。軍の解体はせずに、一旦、少数の精兵を連れて、董卓は并州に移った。とりあえずの様子見だ。その時だな、呂布や張遼たちと出会ったのは……」
 その時の光景を思い出すように、華雄は目を閉じた。
「あいつらは、上の連中に飼い殺されて、くすぶっていた。お前達にとっては敵だから、よくわからんかもしれないが……張遼は一本気な奴で、呂布は……なんというか、とらえどころのない奴でな。扱いにくかったんだろう。特に、呂布は。実力は私と同等……か、それ以上かもしれないんだが」
 華雄は、正直、呂布と真正面から一騎打ちをして勝てる気はしなかった。ただ、プライドもあるので、朱里や雛里相手にそれは言えなかった。
「それでも、異民族撃退や黄巾討伐に功をあげてはいたようだ……将としてというより、兵器として、な。呂布も張遼も、当時は死んだような目をしていたよ。董卓はそれを見かねたんだろう。董卓は、2人に……陳宮もだったかな? ともかく、連中に何度も会いにいっていた」
「……じゃあ、それが」
 と、雛里が相槌を打つ。
「そうだ。呂布の離反につながり、董卓の朝廷掌握につながった」
 董卓は、最終的に朝廷の招請に応じ、わずかの兵と共に洛陽へ入った。
 だが董卓は、この時ミスをおかした。
「人づてに聞いた話だから正確なところはわからんが、あの時、董卓には2つの勢力からの接触があったらしい。宦官の最上位、十常侍の張譲。そして大将軍の何進だ。2人とも董卓の軍に注目して、敵対勢力の牽制、ひょっとしたら殲滅に利用しようとしていたのかもしれない。董卓はもちろん、それを見切っていた。あからさまな策謀の招きに応じる必要は無い、それが軍師、賈駆の意見だったし、私たちも同意見だった」
 朱里と雛里は、神妙な表情で華雄の話を聞いていた。貴重な、当事者の語りは、2人の知的好奇心を強く刺激しているようだった。
 なので華雄は、どこか気持ちよく、話をすすめられた。
「だが、董卓は洛陽へ向かうことに決めた。中央の身勝手ないざこざに、怒りもあったのだろう。数万の大軍勢から、わずか三千を選び抜き、出発した。張譲、何進、どちらにも味方する気はなかったようだが……情勢は一気に変化した。宦官による何進暗殺。そして
袁紹たちによる宦官殲滅。張譲の皇帝と陳留王を連れての洛陽脱出……めまぐるしい変化の中、運が良かったのか悪かったのか、董卓は、宦官と共にあてどもなく移動していた陳留王を発見、保護して、洛陽へと連れ戻せた」
「え?」
「はわ?」
 そこで、朱里と雛里がそろって声を上げた。
「ん、なんだ?」
「陳留王だけですか?」
「皇帝陛下も一緒だったんじゃ?」
「……ああ、そうか。そういうことになっていたか」
 華雄は頬を掻いた。
「その時の皇帝は、今も行方不明だ」
「え、じゃ、じゃあ、董卓が皇帝陛下を弑して今の献帝にかえたっていうのは……」
「欺瞞情報だろう。他の誰かが皇帝を殺した罪を董卓に押しつけたか、本当に行方不明なのを利用したのか……今もわからんが」
「あわわ……!」
「はわわ……!」
 2人は目を丸くした。
 わたわたと混乱した様子を見せてはいるが、頭の中はとてつもない速さで思考しているのだろう、やがて落ち着いた。
「ともかく、それで洛陽へ入城したのはいいが、兵を選りすぐってきたのがあだになった。陳留王を擁してはいても、その時の朝廷内は……混沌としていたからな」
 なにせ、張譲と何進、二大勢力のトップが一気にいなくなったのだ。
「混乱をそのままにしておけるほど義にうといわけではなし、かといって、他を圧倒できる兵力もなし。張譲や何進が招き寄せた諸侯はバラバラだが、兵の数は多かった。董卓は、とりあえずの協力を呼びかけると共に、裏で賈駆が工作に走った」
 2人は東奔西走し、大兵力を偽装し、陳留王をかつぎあげて、秩序の維持に努めた。周囲の悪意に気づきながら、虚勢を張り続けた。
「その時に董卓に応じたのが呂布と張遼だった。主である丁原を切って、その兵を連れて董卓軍に合流した。無名の2人を将軍にまで取り立てたのは、これがあったからだな。実力も十分あったが、この帰順が趨勢を決めたからな、その功績はでかい。加えて、賈駆が死んだ何進の私兵を金で釣り上げて吸収した。実態はともかく、数の上では大兵力が確保できた。これで政局を動かすことができるようになったわけだ」
「それで、袁紹さんたちは黙って従ったんですか?」
「表向きはな。皇帝がいないままではマズイということで、陳留王を皇帝に据えたんだが……おまえたちの反応からすると、この時点で反董卓の勢力が工作をはじめていたんだろうな」
「皇帝を殺し、専横を極めている、と」
「ああ。実際は必死だったがな。何進が死んだ前後に、有力な清流派の連中は、洛陽から退いていた。それをもう一度かき集め、残存宦官勢力を排し、政権の形を整えようとした。袁紹や曹操も招聘したが……袁紹は元々自分が上に立つつもりだったんだろうし、曹操は傍観……、まともなやつはほとんど集まらなかったな」
 水で喉を潤す。喋りすぎだな、と華雄は思った。
「必死さも報われない、そんな状況だったな……まぁ、私は特になにもやってないが」
 当時、武官は出る幕がなかった。
「その後は、おまえたちの知るとおりだろう。いつの間にか洛陽から抜け出していた連中は外で連合を組み、董卓を包囲した。そのときに、全て投げ出して長安へ向かうべきだったのかもしれんが、結局、戦うことになった……」
 華雄は遠い目をして、空を見上げた。
「あ、あのあの」
 孔明が、控えめな声で、
「ご主人様も、桃香様も、董卓さんの思いを無駄にするような事は、しないと思います。だから、あの……」
「……? あ、ああ、そうだな」
 華雄は、2人のどこか悲しそうな目を見て、不思議な思いにとらわれた。
(同情……か? 変な連中だ……)
 憎い敵ではないとはいえ、仲間ではなく敵には違いない相手の想いまで、背負いこむことはないだろうに……と、呆れを通り越して感心する。
(だが……)
 華雄は、思う。
(こういうやつらがいれば、後に何も残らない戦いで死ぬことは、無いのかもな……)
 華雄は何度か色々な勢力を転々としているが、それは名を残す場を探していたからだ。
 戦って戦って、名をあげて、誰にでも知られている存在になる、それが目標だった。夢だった、といってもいい。
 しかし、劉備軍ならば……。
 少なくとも、こいつらには名前を覚えていてもらえるか……。
「ん?」
 そこで、華雄は1つ思い出した。
 華雄は孔明と鳳統、また他の劉備軍の将の真名を教えてもらっている。
 だが、華雄は真名を誰にも教えていない。
「……ああ、そうか」
 今まで、部下や上官、同僚はいても、仲間といえる者はいなかった。董卓達は仲間だと思っていたかも知れないが、華雄は、どこか冷めた感情のままにつきあっていたからだ。
 だから、華雄の真名を知っている者はいない。
「どうかしましたか、葉雄さん?」
 雛里が、突然表情を変えたのをみて、小首を傾げる。
「……いや、お前達の真名を知っているのに、私の真名は伝えていなかったことを、思い出してな……聞いてもらえるか?」
「は、はい!」
 2人は声を揃えて頷いた。
「別に呼んでもらわなくてもいい、ただ、覚えていてくれればな……私の名前……私の真名は……」
 止んでいた風が、また吹いた。
 葉擦れの音と共に、その名は小さく響いた。
「機会を見て、劉備や関羽達にも伝えておく。まぁ、知っていれば十分だ。あまり真名を呼び合うのは慣れていなくてな……」
 はは、と小さく笑う。
 朱里達は、教えられた真名を反芻するように、幾度か小さく頷いた。
 そして、誰からともなく茶器を使い、また穏やかな茶会に戻った。
「あれ? なんか珍しい組み合わせだな」
 と、唐突に、北郷一刀が顔を見せた。
「お茶してたんだ?」
 一刀は卓の上の様子を見て取り、微笑んだ。
「はい。ご主人様は政務の途中ですか?」
 一刀は手に竹簡や紙をいくつか抱えていた。
「ああ、うん。大体終わったけど、文字だけじゃ実状がよくわからないのが多くてね、午後からは街をまわろうかと思って」
「そうなんですか。あの、今日は私、手が空いてますので、一緒に……」
「あ、あの私も……!」
 と朱里と雛里がぴょんと手を挙げた。
「うん。それじゃあ、一緒に行こうか」
 一刀は快く応じた。
 返事を聞いて2人は途端に頬を緩めた。
「葉雄も一緒にどう?」
「私もか?」
 葉雄は一刀の顔を見る。必要だからじゃなくて、多分、そのほうが楽しいから、とかそんな理由なんだろう。無邪気な顔だった。
 ふ、と葉雄は笑みを浮かべた。
「そうだな。同行しよう」
「よーし、じゃあ、4人でいろいろまわるとしようか」
「はい!」
 満面の笑みと共に答える朱里。
 その横で、雛里が葉雄の肩にそっと触れた。
「ん?」
「葉雄さん、ご主人様には真名を教えたんですか?」
「い、いや、まだだ……」
「一緒に街をまわるときがチャンスだと思います」
「チャンス……?」
「好機って意味の、天の言葉だそうです。チャンスです、葉雄さん」
「そ、そうか……?」
 葉雄は一刀の方を見て、少し顔を赤らめた。さっき朱里や雛里にしたようにすればいいだけなのに、息が詰まるぐらいの緊張がなぜか胸の内にあって、ちょっとのことがすごく難しいことのように思えた。
(よく考えたら、真名を男に伝えるというのは、かなり……特別なんじゃないか?)
 親兄弟を除いて、異性に真名を教えるなんて事はめったにない。それこそ、恋人や伴侶でもなければ……。
(しかし、劉備軍の主要な連中は全員真名を北郷に教えているようだし……あいつはあいつで、いたいけな少女たちにご主人様などと呼ばせて――)
「あれ? 雛里、口の所、食べかすついてるよ」
 と、葉雄が悶々としているのをよそに、一刀は雛里の口のあたりを指差した。
「え、えと……」
 雛里は指摘され、あわてて唇を拭くが、見当違いのところだったようで、
「そっちじゃなくて……ちょっと、動かないでいてくれ」
 一刀は手を伸ばし、指先で優しく雛里の柔らかな唇の端をぬぐい、多分饅頭の餡の残りだろうそれを――
「ぱく」
 と自分の口に持っていった。
「あわわ……!」
 ぼっ、と火がついたように雛里は赤面した。
「甘い」
「……ご、ご主人様」
 雛里の視線が、一刀と葉雄の間で泳いでいた。嬉しいようでもあったが、困っているようでもあり……その理由は。
「……」
 葉雄が、じぃぃっと、一刀を睨んでいた。
「ん?」
 一刀もその空気に気づいたのか、そちらをみた。
「おわ!? よ、葉雄?」
 ジト目でねめつけられて、一刀は、不安そうな顔で葉雄の出方を窺った。
 なにせ、こういう顔をしているときの葉雄は次にどんな言動をするか――
「お前に……」
 嵐の前の静けさ。
「え、な、なに?」
 華雄らしくない小さすぎる声に、思わず一刀は聞き返した。
 その瞬間強い風が吹いた。あおられて枝木が折れてしまうぐらいしなり、葉がおちそうなぐらい擦り合わされて、不気味な音をたてた。
 一刀は、曇ってもいないし雨も降っていないのに、あたりが雷雨の時のようにどよめいた気がした。
 そして華雄は口を開き――
 
「お前に!! 私の真名は教えんからなっっ!!!」

 雷霆のごとき華雄の叫びに、一刀はのけぞった。
「え、ええええええええ!?」
 一刀の困惑を背に、華雄は大股で歩み去っていった。
 朱里は慌ててそれを追いかけ、雛里はその場にとどまり頭を抱えた。
 一刀は呆然と、立ち尽くすだけだった。

 あたりは、一転、人声が消え失せ、木々のざわめきだけが残った。
 

 4/華雄尋問ハード?
 
「……さて、というわけで、もう一回、華雄の尋問をやろうと思うわけだが」
「どういうわけだ!! なんで私は縛られてるんだ!!?」
 ガタガタと、華雄は縄で身体を縛り付けられた椅子を揺らして、抗議の声を上げた。
 目の前には、北郷一刀と鳳統がいる。
「だって華雄が俺にだけ真名を教えてくれないっていうから……」
 しょぼーん、とした表情で一刀は華雄を見る。
「なんだその私が悪いみたいな言い方は!!」
 ここは洛陽、劉備軍の尋問室……ではなく、一刀の寝室である。
「呼び出されて来てみた結果がこれか! わけがわからんぞ!」
 憤懣やるかたない様子で、華雄が暴れる。
 一刀の部屋に入った次の刹那、待機していた鈴々に転倒させられ、椅子に縛り付けられた。鈴々は役目は終わったとばかりに帰り、あとには一刀、雛里、そして華雄が残された。
 そしてこの状況である。
「どうなってるんだ雛里!?」
 目線を向けられて、雛里は帽子に手をやり、悲しそうな表情で答えた。
「ええと、あの、私のせいで、お二人が抜き差しならない状況になってしまいそうなので、ここはひとつ強引な手段で……と」
「待て待て待て待て!! この状況が一番抜き差しならんだろ! 何をする気だ!」
「ええと、何をするんだっけ、軍師鳳統?」
「はい。短い期間ではありますが、葉雄さんとの色々なやりとりで、いくらか性格や性癖の、でーたが集まりました」
 劉備軍、特に軍師二人に顕著であるが、よく一刀の使う言葉を取り入れている。
「それらの要素と、この本を照らし合わせまして……」
「な、なんだその妖しげな表紙の本は……?」
 華雄が眉を寄せた。
 雛里はちょっと頬を染めた。
「あわわ、閨房のお作法の本です」
「捨てろそんなもの!!」
 華雄はぎろりと一刀を睨んだ。
「北郷! 何を読ませてるんだお前は!!」
「お、俺が読ませたわけじゃないよ?」
「嘘つけこの!」
 暴れてもどうにもならないのはわかっているが、華雄はじたばたして抗議の意を示す。
「えと、それでですね、葉雄さんのような方の場合、こういう形になるようです……ご主人様の世界では、こういう人は、どういうんでしょうか?」
 雛里は手元の本を、一刀に見せた。
 一刀はそれを眺め、顎に手を当てて思案し、やがて口を開いた。
「んー……マゾ……かな」
「なんだその意味はわからんが不快な響きの単語は……!」
 自分が、マゾ、とかいうものである、といわれているのはわかった。
「では、そのマゾの葉雄さんに、この本に書いてあるような事を試してみて下さい」
「わかった」
 そして雛里は、あとはお二人で、と言い残して去っていった。
「さてと」
 雛里を見送って、華雄のほうを振り向いた一刀の表情は――笑顔だった。
 ぞく、と背筋が寒くなるのを華雄は感じた。
 そういえば、最初に尋問されたときも、2人きりになってから、ひどい攻撃を受けた。具体的にいえばくすぐられただけだが、束縛された状態からのくすぐりは、かなり、きつかった。
 一刀が、ゆっくりと、華雄の方へと向かってくる。
「ま、待て。落ち着け! こんな方法で真名を知って、それで満足なのか貴様は!!」
「ん~、そうだなぁ……確かにそうかも」
 一刀は華雄の方へ差し出した手をひっこめた。
 ほっ、と安堵したのも束の間、
「じゃあ、今日は親睦を深めるだけということで!」
 がばぁっ、と一刀は華雄に襲いかかった。
「ひっ!?」
 不意をうたれて、華雄は思わず息を呑んだ。
「まぁ、あまり痛いこととか苦しいことはしないから……多分」
「な、なんだ、多分って!」
「だって、雛里が本に書いてある事をやれっていったから」
「……ちなみに、何が書いてあるんだ」
「ええっとねぇ……例えば…………」
 と、一刀は本に目を落とすが、途端に口ごもった。
「う~~ん、口で説明するのが難しいんだけど……道具を使うのと、俺が直に触れるのと、どっちがいい?」
「なんなんだ……道具だと? ……嫌な予感しかしないが、しかし、お前に触れられるよりはマシか……」
「なんだよう。そんなに嫌がらなくても良いじゃないか」
 一刀は口を尖らせる。
「う、うるさい! とにかく、直接は駄目だっっ!」
「わかったよ……それじゃ、まずは、こんなところからいこうか」
 一刀は、部屋の隅に置かれた箱を持ち出してきて、その中の1つを取り出した。
「……? なんだそれは?」
 一刀が指でつまんだものは、小さな、二等辺三角形の小道具だった。より細かく形を描写するなら、「A」の形というのが正確だろう。木製らしいそれは、何に使うのか見当もつかなかった。
「劉備軍は資金難だからね。俺の世界にあった物のなかで、こっちでも作りやすいものを再現して、それを売ってるんだ」
「それは知っているが」
「これはね、その中の1つ。『洗濯バサミ』だよ」
「洗濯バサミ?
「そう。バネの部分がちょっと面倒だから、曹操軍の李典にも手伝ってもらったんだけど、結構便利なんだ」
「名前からして洗濯に使うんだろう? それをいま出してどうする」
 心底不思議そうな顔をするが、一刀が、洗濯挟みを指で開いたり閉じたりしているのを見て、眉を曇らせる。
「……」
 ちょっとだけ、使い方がわかってしまった。挟み、という名前からも推測が可能だった。
「本には、もっと拷問器具みたいなやつでやる、って書いてあるんだけど、それじゃ危険だし、かわいそうだからね。これでやるよ」
 と、一刀はおもむろに華雄に近づく。縄で締め付けられて括られ、強調された部分が、ぞくりと震えた。
「ま、待て……!」
 と言葉では拒むが、身体は動かず、寄ってくる一刀の手からは逃れられない。
「ええっと、ここかな?」
 一刀の手の平が、華雄の胸を撫でる。
 体のそこかしこのざわざわが、一刀の手の平の中に集められたかのようで、華雄の乳房に変な痺れが走った。
「……っ、ちょくせつ、やるなというのに……」
 声がうまく出ない。
「ごめんね。服の上からじゃよくわかんなくて……、と、これか」
 よっと、という声と共に、洗濯挟みを開口させ、噛み付かせた。
 華雄の乳首に。
「ひっっ……!!」
 どこか甘やかだった愛撫からの突然の痛みに、華雄の体がびくんとはねた。
「どう? 痛い?」
 少し心配げな一刀の様子に、華雄はちょっと丸めていた背を伸ばした。
「…………ふっ、どうということは」
「えい」
 ぴん、と一刀は指先で洗濯バサミをはじく。軽く。
「っっあぅ!?」
 電流を流されたように震え、その勢いで椅子が倒れかかったので、慌てて一刀は華雄の体を抑えた。
「くっ……ぅう」
 一刀の腕の中で華雄は悶え、目の端に涙を浮かべた。
 スプリングは弱めに調整してあるものだから、潰れたりはしないはずだが、やはり、痛いらしい。服越しでも効果は十分なようだ。
「もう一つ、やってみる?」
「……っ、……好きにしろっ!」
 この程度で屈するつもりはないのか、声を低めながらも、拒まなかった。
 洗濯バサミをもう一つ、逆の乳頭に噛ませた。
「っく……ぁあ……!」
 歯を食いしばって耐えるものの、痛苦で声を漏らす。
 痛みに強いと思っていた自分の体が、たった2つの歯牙に蹂躙されて、悲鳴を上げている。
「……っくぅ、なんで、こんな……」
 動きを制限されているせいか、痛みが、痛みとして、とぐろを巻いて居座り、体を疼かせている。
 しかも、その疼いているのが、普段は気にかけない部分……精々、運動の時擦れたりするのが気になる程度の部分……乳首なのだ。
「か……は、ぅうう」
 息がしづらい。痛みに手足が暴れたがるが、縄が食い込んで動けない。
 そして、息をするたび、意識が、そっちに集中してしまう。
 小さいながら極悪な圧力を、華雄の繊細な部分にかけているそれ。
 じりじりちりちりと身を焼く痛み。
「は……ぁ?」
 流れるほどではないが視界を滲ませる程度の涙のむこうに、華雄は一刀の顔を見た。
 見ている。
 一刀が見ている。
 何を――
 華雄の疑問は、痛みが、答えとして帰ってきた。
 乳首だ。
 服の上からじゃ、よほどのことがない限り見えない、先っぽが、洗濯バサミで、挟まれて強調されているのだ。
 だから、わかる。その存在がわかる。
 他人にも。一刀にも――!
「ぅあ、っ、……見るな、っぁ!」
 視線を感じた瞬間、痛みが、ぐるりと華雄の体をまわって、よがらせた。
 乳首からその奥、背筋を通って腰、お尻まで、痛みの熱が、あたたかなとろみとなって駆け抜けた。
「な、んだ、これ……」
 快感の前兆のようなものが巡ってきて、華雄は、何が起きたのか起きようとしているかわからず、震えた。
「……?」
 一刀は華雄の状態の変化に気付きはしなかったものの、さっきまで痛みに耐えて猫背になっていた背が、反り気味になっているを見てとった。
 そこで一刀は、もう一度、
「えいっ」
 ぴん、と洗濯バサミを弾き、刺激を与えた。
「っひぅぁあああっ……!?」
 絶頂とは違うが、痛みと快楽の汀に突き飛ばされて、華雄は四肢を引き攣らせた。
 その反応に、苦痛だけではない色を感じて、一刀は、興奮を覚えた。
(これが直接なら……?)
 ごく、と一刀は唾を飲む。
 しかし、すでに涙目の華雄をこのまま追い打ちする気は起きなかった。
「じゃあ、次いこうか」
「つ、ぎ……?」
 一刀は華雄の縛めの1つをほどく。手足は自由にならないが、椅子と華雄の体が離れた。床に落ちないように、一刀は華雄の足と首に手を回し、そのまま持ち上げた。
 いわゆるお姫様だっこの状態で、一刀は華雄を運ぶ。
(まぁ、乳首に洗濯バサミ付けてお姫様もないけど……)
 しかし、理解できない痛さと気持ちよさに瞳を潤ませる華雄の顔は、いつもより弱弱しく、支配欲を掻立てられた。
(Sのつもりはないんだけどなぁ……)
 内心複雑だが、華雄がMなら仕方がないか、と思った。
 一刀は寝台の上に華雄を寝かせ、乳首の洗濯バサミを取り、ポケットに入れておいた、拘束具を、華雄の目に付けた。
「っ!?」
 華雄は、突然暗くなった視界に驚き、ベッドの上で跳ねた。
 新しい拘束具。視界を奪う、目隠し。アイマスク。
「な、なんだ、これ、おい!」
 華雄は布団の柔らかさに一安心した直後の仕打ちに、思わず、縄のことを忘れてじたばたした。手も足もぎっちり縄が食いついて、いくらか余裕はあっても、自由はない。
 それでも、視界を奪われることに比べれば、不満はともかく、不安は少なかった。
 すぐ傍に一刀がいることがわかっていたからだ。ひどいことをされても、一刀なら、限界の前で止めてくれると、信頼していた。その信頼は、自覚していたわけではないが、目隠しされたせいで、はっきりわかった。
 拘束されてからさっきまでの、一連の行為も、一刀の存在が撃鉄でもあり、安全装置でもあったのだ。
 だから、その存在が、その動きが見えないのは、怖い。
「ほ、北郷ッ! こ、これは、やめろ!」
「ん? どうして?」
「どうしてって、し、視覚が。見えないと、心の準備が――」
「大丈夫、大丈夫、これ以上痛いことはしないから」
 と、一刀は安心させるように、華雄の剥き出しの肩に手を置いた。
 その肌のぬくもりに、華雄は少し緊張を解いた。
「まだいろいろ道具はあるんだけどね。それはまた今度にしよう」
「今度って……」
 次が、あるのか、と華雄は心臓を高鳴らせた。
(――いや、喜んでどうする!)
 ようするにまたひどいことをする宣言ではないか。
「ところでさ……直接触れてもいい?」
「……? あ、ああ……まぁ、いいだろう」
 そういえば、最初は道具の方が良いって言ったんだっけ、と華雄は思いだした。なんであんなことを言ったのか不思議なくらいだった。
 今は、直接の方がマシだ。
 直接の方が、良い。
「では遠慮無く……の前に」
 一刀は華雄の細くくびれた足首をつかみ、華雄の肢体を引っ繰り返した。
「ひあ!?」
 目が見えないせいで、何をされたかの判断が一瞬遅れる。
(足を開いて、天井の方に……っ、下着っ、み、見えてる!?)
 割り開かれた足の根元、そこには華雄の下着……パンツがある。
「うーん、ピンクとは意外だな」
 一刀は感想を漏らしつつ、足の縄を別の縄に通し、股を開かせたまま固定した。
「こ、これっ……ひ、ひどいかっこじゃ……っ!?」
 見えなくても、自分がどんな状態かは感覚でわかる。
 下半身を天に向けて、股間をさらして……娼婦のように、いや、娼婦でもこんなアホなポーズはしないかも知れない。
 一刀は、アソコを、見ているだろうか。こんな姿態にした張本人だ。絶対に、見ているに違いない。下着はつけているとはいえ、こんな、こんな見せ方は想定していない。
 そりゃそうだ。下着を見せるとき、なんていうのは、よほどの事態で。
 そしてそのよほどの事態の先には、その、つまり、性の、交わりがあるわけで。
 となると、下着のままでいるわけにはいかないのだから、こんな、じっくりと、「見られる」ことはあまりない。
 そしてこの恰好は、まさに、「見られる」、恰好だった。
 店に陳列された商品のように。見られる。観察される。
 下着……いや、正確に言えば、下着じゃない。
 「女が穿いている」下着……だ。
 お尻の丸みで盛り上がり、ふくらみ、お尻の溝にそって皺を作った、パンツ。
 視線を感じる。見えないのに。感じる。
 股座の周囲をなぞるような舐めるような、ねちっこい、視線の熱。
「っ……ぁ、み、見るな……見たら、こ、ころすッ……」
 ただのショーツではない。その先に、自分の、体の、一番、複雑な部分がある。見せたくない、汚い、いやらしい、隠すべき、秘部。
 けれど、そこが、男の情欲をかきたてるということも知っている。
 なら……一刀も?
 このわずか一枚の布を取れば、私を抱きに来る?
(………………いや、だ……)
 華雄は心の奥底で抗いの小さな火を灯した。
(……こんなので、抱かれるのは、嫌だ)
 今のこの状況では、抵抗のしようもないが。
(舌を噛むぐらい、できるんだぞ……)
 華雄は、ひっこんだはずの涙が、またじわっ、と湧き出てくるのを感じた。
(……こんなの、いやだからな。こんな状況で……こんな…………?)
 乱世に生まれ、戦場に生きた自分の、奇妙な弱さに、疑問を抱いた。
(殺されることも、犯されることも、覚悟はしていたのに……なんで、こんなに胸が苦しい)
 怒りとも違う種類の、胸の締め付けを感じる。縄でぐるぐる巻きだから? 違う。
 結論が出ない心と体のあわいに、一刀の手が滑り込んだ。
「……ひぁ!?」
 つ、と硬い指の先端で、太股の線をなぞられる。
 混乱し、沸騰する頭を、一刀の指が掻き混ぜる。見えないせいか、鋭敏に、指の動きが感じ取れる。すり、すり、と肌に一指が通り、通った肌が加熱される。熱い。
「……ふぁ……ぅ……くぅ……!」
 それほど敏感でも繊細でもない、性的な器官でもない部分だと思われる場所が、ただの指一本で、色気づく。
 汗が噴き出て、吐息まで熱せられてくる。指の先っぽただ一点でも、これは、交わりだった。性の交わりだ。
「あ……ぅう……」
 もっと露骨に触ってくれば、罵詈雑言でも浴びせられるのだが、控えめな接触に、なにも言葉が出ない。
 そのせいで、からだが熱っぽくなる一方で、気づけばなにも考えられなくなっていた。
 指が太股の内側を経由して、足の付け根の方へと進路をとる。
 ぞく、と総毛立った。ついに、来る、と。
 どうする、なんとか、避けるか?
 どくん、どくんとうるさいぐらい大きな音をあげる心臓。短くなる呼吸。汗が流れ、そこかしこが、もどかしくなる。
 あと少し、あと少しでパンツに指がかかる――
 ごく、と唾をのんで心の準備をしたところで。
 ひょいっ、と指が体から離れた。
「!!?」
 驚きで声も出なかった。
「……な、なにを……北郷?」」
 途端に不安になる。気配は何となく感じられても、触れられていないと、どこにいるのかわからない。
「はっ……あ……ほん、ごう?」
 怖いけれど、なにかを待ち望むような、そんな心境で、彼の動きを、耳や肌で探る。
 近付いてくる雰囲気――華雄はどこかほっとして――
「ぱっちん、と」
「いっ……!!?」
 洗濯バサミ再登場、さっきと同じ、左乳首にがっちり噛み付いた。
「ひあああああああ!!」
 哭声をあげ、体を曲げ、よじる。
 過敏になっていた身体に、不意打ちの痛みはこたえたようで、涙声が漏れた。
「ぅ……ぅう……!」
 不意の痛みと驚きが冷めると、怒りの熱がわきおこった。
「もう……痛くしないんじゃなかったのかっ……!?」
「ごめんね」
 一刀は素直に謝った。
「たってたから、して欲しいのかなと思って」
「た……って?」
 言われて意識をそちらに向けたが、左の方は洗濯バサミの鈍痛でわからない。右は……たしかに、勃起しているようだった。
 さっきの洗濯バサミのせいか……あるいは、一刀のわずかな愛撫のせいか。
「だ、だからって……だな、これはないだろ……私は、てっきり……」
「てっきり?」
「……なんでもない」
 ふい、とそらした顔に、一刀の手が触れた。
 頬を撫でる手。アイマスクから流れた涙の筋を拭いとる。
「ん……」
 ついでに、一刀は洗濯バサミを華雄の乳房から外し、ベッドの隅に放った。
 手の平の温もりと、痛みからの解放に、華雄の肩から力が抜ける。
 その瞬間に。
 華雄の唇に、一刀の唇が重ねられた。
「んむ!?」
 手指の硬い感じとは違う、柔らかな感触に、華雄は、口づけされている、と理解した。しかし、理解よりはやく、一刀の唇が動く。
 唇の表面をすべり、撫ぜる。左右に、こすりあう。
 離れたと思ったらくっつき、また離れ、くっつき、雨のように、キスをふらせる。
「……ん、ぁ……ちゅ……ぅ……」
 口で息をしようと思えばその唇を奪われ、声を出そうとすればその口唇を咥えられる。動きを封じるという意味では、身体を縛る縄と同じ。優しい、緊縛。
「……ぷは……ぁ」
 長い長い口づけの連なりがようやく途切れ、華雄は、艶めいた吐息をこぼした。
「お前は、いつも唐突だ……」
 と、口を尖らせると、
「じゃあ……これで」
 一刀は、華雄の足の縄を解き、自由にした。
 そして、アイマスクを外した。
 視界が開けて、飛び込んできたのは、一刀の顔だった。
「あ……」
 鼓動が早鐘を打ち、声が震える。
 唾液で濡れたくちびるが、先程の行為は、確かなものだったのだと主張していた。
 再び、一刀の顔が迫ってくる。
 今度は、何がしたくて、何をするつもりなのか、わかった。
 今なら拒める。
 手は動かないが、顔も身体も避けられる。
 強引にやられれば拒否できないが、多分、キスしないという意志を示せば、一刀は、しないだろう、と思った。
 
 だから――
 
 だから、華雄は、目を閉じた。
 唇があわさる。
 吸い付くように、ぴったりと重なる。
 動かせるようになった足を、一刀の腰にまわして、身体も重ねた。
 深く、重なる。いや、重なりじゃない。
 さっきの、指と肌の触れ合いより強い、交わり、だ。
「んん……」
 ベッドの上、2つの肢体が睦み合い、何かの拍子で蹴飛ばされた掛け布団にのっていた洗濯バサミが、床に落ちた。
 とん、と床を跳ねる音が鳴り、床の上を転がり、その動きが止まるのとほぼ同時に、一刀と華雄は唇をはなしていた。
「……」
「……」
 変な沈黙が降りる。
 気恥ずかしいというか、気まずいというか、そんな空気。
「えっ……と、あ、改めようか、また、今度に」
「ああ……」
 お互いにもったいない気もしていたが、この流れで、そのまま、そういう行為に突入するのも、ちょっと抵抗があった。
 一刀は華雄の緊縛を全て解き、痕がついていないか確かめた。
(とりあえず口づけで、満足、か)
 華雄は、指で自分の唇に触れて、なぞった。
(……子供か、私は)
 自嘲するが、どこか心地よかった。
 いつでも飛び越せると自らに言い聞かせていた一線で、踏みとどまった。
 いつでも、どこでも、だれでも、ではない。
 真に特別な想いと共に。想いを共に。
(次だ。多分、その時が、真名を、伝えるときだ)
 胸に宿った予感と決意を抱いて、一刀の方を見る。
 一刀は、洗濯バサミやらアイマスクやらを箱にいれている最中で、こちらに背を向けていた。
「…………」
 とりあえず華雄は、

「おりゃあああああああああ!!」
「どわあああああああ!?」

 その尻を思い切り蹴飛ばして、今日の溜飲をさげておいた。




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